微小転移が見つかった
エコー検査で左胸に1.5㎝のシコリが2つあると言われました。造影CTでは転移はなく、全摘手術を行いました。手術前検査ではHER2+1、グレード2、Ki67は30とありました。医師から手術前にステージはわからないと言われました。術中にリンパ節生検を2つし、1つに0.3㎜のがん細胞が見つかり、「あと4つ取りました」と言われました。リンパ転移が見つかりとてもショックを受けました。微小転移が見つかった先に、マイクロサイズの転移があることもあるのでしょうか。術後化学療法では経口抗がん薬のTS-1やページニオを使用し、点滴抗がん薬を使用しない場合とでは治療効果は変わるのでしょうか。できるなら客商売なので、脱毛しないで仕事を続けたいと思っています。
(51歳 女性 愛知県)
A 微小転移は転移陰性と予後は変わらない
乳腺外科医長の上野貴史さん
0.2㎜から2㎜までの大きさのリンパ節転移は微小転移といって、それ以上の大きさの転移とは別に扱います。以前は微小転移があればリンパ節転移が全くない人よりも予後(よご)が悪いと考えられていた時代もありましたが、データが増えるにつれ、最近ではリンパ節転移陰性例と予後は変わらないとみなされるようになってきました。
2023年のESMO(欧州臨床腫瘍学会)乳がん治療ガイドラインでも、「リンパ節微小転移例は陰性例と予後は同じである」と本文中に明記されています。腋窩(えきか)リンパ節への治療も、微小転移の場合には、それ以上の郭清や照射も不要とされています。あと4つ取る必要もなかったといえます。
抗がん薬云々との話ですが、ホルモン受容体の結果が書いてないのでそれ次第で変わりますが、以下は受容体陽性として話を続けます。ご相談者の場合はオンコタイプDXの検査を受け、再発スコアが高くなければホルモン薬だけでいいと思われます。スコアが高い場合なら抗がん薬を加えることが必要になりますが、その場合、脱毛が嫌ならTS-1(一般名S-1)の併用でも良いと思われます。なおグレード2では、リンパ節転移4個以上か腫瘍径5cm以上でないとベージニオ(一般名アベマシクリブ)は保険適応となりません。