タキソテールを中断した場合の影響について知りたい

回答者●上野貴史
板橋中央総合病院乳腺外科医長
発行:2019年7月
更新:2019年9月

  

2018年7月の健康診断で左胸にがんが見つかりました。精密検査の結果、微小乳頭がんステージⅠと診断されました。病理検査の結果は大きさ1.7㎝、手術時検査のセンチネルリンパ節転移はゼロ。術後病理検査でER:マイナス、PgR:マイナス、HER2:陽性、Ki67:38%、切除断端:腫瘍なし、脈管侵襲:プラスで手術後、抗がん薬治療中です。

そこでご相談ですが、EC療法4回を終え、タキソテール(一般名ドセキタキセル)+ハーセプチン(一般名トラスツズマブ)の治療4回に移ったのですが、タキソテール1回目の副作用が強く、食事が出来ない期間が長く続いて鉄剤、抗生物質等飲めず、2回目の投与前の血液検査で貧血気味のため、ハーセプチンのみの投与となりました。

このまま、体調が戻らなく副作用がつらい場合、タキソテールは見送り、ハーセプチンのみを残り20回(1回/3週間)の予定になると言われましたが、タキソテールを中断した場合の影響は、データとしてはない、と言われました。タキソテールを中断した場合の影響についてご教示ください。

(54歳 女性 岡山県)

ハーセプチンのみの治療は標準的ではない

板橋中央総合病院
乳腺外科医長の上野貴史さん

この患者さんの場合、術後の補助療法としてタキソテールを使ったところ副作用が強くて1回で中断し、ハーセプチンのみの治療になると主治医から言われたとのことですが、ハーセプチンと併用できる抗がん薬はタキソテールだけではないので、タキソテールがダメだったら別の抗がん薬、例えばタキソール(一般名パクリタキセル)などを試してみるのが一般的です。

タキソテールが副作用が強くてダメだったからといって、1剤だけで止めて、ハーセプチンのみの治療をやるということは標準的ではありません。もう1剤試しても副作用が強くて継続困難な場合に、初めて考慮するのが通常です。

2018年10月にはパージェタ(一般名ペルツズマブ)併用が認可されているので、ハーセプチンだけでなくて、パージェタの追加を考えてもいいかも知れません。

抗HER2薬のみで、化学療法を併用しない場合には明らかに治療効果は減弱します。他の抗がん薬を試してみることをお勧めします。

EC療法=ファルモルビシン(一般名エピルビシン)+エンドキサン(一般名シクロホスファミド)

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