子どもが欲しいのですが

回答者●上野貴史
板橋中央総合病院乳腺外科医長
発行:2024年4月
更新:2024年4月

  

2023年10月に右乳房に約1.5㎝の浸潤がんが見つかりました。センチネルリンパ節転移はなく、ステージⅠと診断され部分切除術を受けました。サブタイプ分類はHER2陽性、ホルモン受容体陽性でした。主治医から術後療法として放射線治療と化学療法、その後ホルモン療法を5年間実施すると説明を受けました。私は子供が欲しいので、このまま治療を続けていけば子どもが産めなくなるのではないかと心配です。

(40歳 女性 宮城県)

受精卵の凍結保存を薦めます

板橋中央総合病院
乳腺外科医長の上野貴史さん

確かに化学療法を行なえば、薬が原因で閉経するリスクはあります。ですから、化学療法を始める前に卵子または受精卵の凍結保存をお勧めします。ただ、これは自費診療になり1回あたり40~50万円程度費用がかかります。卵子凍結保存には2021年度から43歳未満の患者を対象に国と都道府県が助成する研究事業が始まりました。ただ、回数や金額に上限があります。東京都の場合であれば40歳以下であれば30~40万円の助成金が出ます。

ご相談者さんの場合、化学療法を終了後、ホルモン療法を5年間行った後、凍結した受精卵を子宮に戻す治療は年齢的に少しきついと思います。

最近ホルモン療法を5年終了する前に出産のため一時ホルモン治療を中止し、出産後に再開しても再発は増えなかったという「POSITIVE試験」という国際的な臨床試験結果が報告されています。最短1年半内服後に休薬し、受精卵を子宮に戻し、妊娠、出産後に、残り3年半ホルモン療法を行うことで、都合5年間のホルモン療法を完了するという方法も考慮できます。

一方、凍結療法を行わない場合でも、ご相談者さんはHER2陽性なので、化学療法は行ったほうがいいでしょう。その場合、ハーセプチン(一般名トラスツズマブ)+タキサン系抗がん薬ならば、閉経する可能性は約20~30%程度でリスクは高くはありません。また、化学療法中にリュープリン(一般名リュープロレリン)注射を行うことで、閉経するリスクが少し減るので併用が薦められます。

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