人工乳房は本当に安全なのか

回答者●上野貴史
板橋中央総合病院乳腺外科医長
発行:2019年12月
更新:2019年12月

  

最近の報道で乳房再建に使う人工乳房が悪性リンパ腫を発症するリスクがあるので自主回収されたという報道がありましたが、これについて詳しく教えていただけないでしょうか。

また、血液がんのリスクの低い新商品が医療保険の適用対象になったとも伝えられたのですが、本当に安全なのでしょうか。

(40歳 女性 富山県)

将来未知の症状が発生する可能性はゼロとは言えない

板橋中央総合病院
乳腺外科医長の上野貴史さん

人工乳房を入れたことで慢性的な炎症が起こり、一部の人に悪性リンパ腫が発症することが判明しました。全ての人工乳房におきるのでなく、テクスチャードタイプという表面がざらざらしたタイプのもので発生します。アメリカのFDA(米国医薬食品局)で因果関係が報告され、製品会社(アラガン社)が自主回収することになりました。日本で保険認可されていた製品がアラガン社製のこのタイプのものしかなかったため、日本で一時期人工乳房による再建がストップしました。

この人工乳房を入れている人が悪性リンパ腫になる確率は今のところ3,300人に1人程度とされています。今後3倍に増えたとしても0.1%程度の確率で、非浸潤がんでなければ、通常の乳がん再発死亡率よりはるかに低いため、再建してしまった人が抜去する必要はないとされています。再建途中の人もいたため、別会社のスムースタイプの人工乳房が急速に保険認可されました。その新商品に関しては悪性リンパ腫の発生リスクの増加は報告されていません。ただし、将来未知の病状が発生する可能性がゼロと言えないのは全ての医療行為について共通です。

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