抗がん薬治療はなるべくならしたくないのですが
2018年11月末に乳がんステージⅡと診断されて乳房温存手術を行いました。リンパ節転移が12個あり、リンパ節廓清(かくせい)をしました。ホルモン受容体、エストロゲン、プロゲステロン共に陽性。脈管侵襲が陽性、核異形度:2、HER2:陽性1+、Ki67:10.8%、今後の治療はルミナルAタイプ、ホルモン療法として*ノルバデックス(一般名タモキシフェン)10年、そして放射線ということです。
ただ、脈管侵襲が陽性ということから、抗がん薬の*TC療法(1回/3週間)4サイクルを行うほうがいいのではということです。
そこでご相談です。できることなら抗がん薬治療はしたくないのですが、主治医の言うように念のため行ってみたほうがいいのか悩んでいます。
(48歳 女性 大阪府)
A 術後化学療法を勧める
乳腺外科医長の上野貴史さん
この患者さんはサブタイプ分類ではルミナルAタイプに該当していますが、リンパ節転移が12個もあった場合、ホルモン療法ではなく抗がん薬治療をするのが標準的な考え方です。
ルミナルAタイプの場合、化学療法は不要でホルモン療法のみで良いということになっていますが、それはリンパ節転移がない患者さんや、あったとしてもリンパ節転移が3個までの患者さんを対象にしているので、いくらルミナルAタイプだったとしてもリンパ節転移が12個もある場合、clinical high riskとして抗がん薬を使用しないという選択はほとんどの医師は取らないと思います。
ですからこの患者さんの場合、抗がん薬治療を避けておられるようですが、リンパ節転移が12個もあった場合には再発のリスクは格段に高くなるので、主治医が言うように術後化学療法として少なくともTC療法を行うことをお勧めします。アンスラサイクリン系とタキサン系の両者を使用する化学療法を考えたほうがよいかも知れません。
*TC療法=タキソテール(一般名ドセタキセル)+エンドキサン(一般名シクロホスファミド)