抗がん薬により強い吐き気
妻(44歳)は直腸がんが再発したため、抗がん薬治療を受けています。強い吐き気で食事が思うようにできません。抗がん薬以外に方法はないのでしょうか? 止めるべきですか? 食事を犠牲にすべきですか?
(宮城県 男性 52歳)
A 食事も大切。副作用を抑える策を
転移性(再発)大腸がんの治療の目標は、良好な予後の延長と症状の緩和の2つです。転移性大腸がんに対する抗がん薬治療は最近の進歩により、生存期間中央値(50%の患者さんが亡くなられた時点での期間)は3年を上回りつつあります。つまり、副作用を抑えつつ、抗がん薬治療により良好な予後の延長を目指すことが理想的です。
現在使っている抗がん薬の種類や組み合わせによって、副作用に対する判断も違ってきます。抗がん薬は、細胞増殖の速い細胞に作用しますので、がん細胞だけでなく、正常な細胞であっても、増殖が速ければダメージを受けやすいということになります。
消化器管は、増殖の速い細胞で構成されているため、影響を受けやすいと言えます。症状は、吐き気、嘔吐、便秘、下痢です。
抗がん薬は基本的には細胞を殺す目的があるので、どうしてもこのような副作用が起きてしまいます。ちなみに、ほかの副作用としては、大腸がんに対する抗がん薬治療ではあまりありませんが、脱毛や白血球の減少があります。
対策としては、経口で抗がん薬を服用している場合は、点滴に替えると症状が改善されることがあります。そもそも吐き気があるということは、口から薬を飲んでいる場合、規定通りに飲むことが難しいということでもあります。医師、看護師、薬剤師に症状を相談し、薬のとり方を替えたほうがいいでしょう。
一方で、抗がん薬治療中はダメージを受けた健常な細胞を早期に修復する上で、食事を十分摂ることはとても大切です。しっかりと食べられる状態にこしたことはありません。
ただ、食欲を増進する薬はありません。対照的に、吐き気を防止する薬は何種類かあります。上手に使っていただきたいと思います。
相談者の奥様が、再発した後に、緩和という目的でオピオイドという医療用麻薬を使用しているとしたら、痛みを止めるための麻薬そのものが腸管の麻痺などを起こすことで、吐き気を催させることがあります。
緩和医療でうまく症状をコントロールしながら、抗がん薬で延命を目指すという考え方で進めるべきです。