抗がん薬のしびれは一生取れないのか?

回答者・大矢雅敏
独協医科大学越谷病院外科主任教授
発行:2013年11月
更新:2019年4月

  

65歳の夫が3年前に結腸がんの手術後、FOLFOX療法を受けました。治療中から手足の先がしびれるようになり、今も残っています。気温が低い日などは症状が強くなるので、階段を下りるのが怖く、車の運転も控えるようにしています。医師からは、「治療が終われば徐々にしびれは取れていく」と聞いていたのですが、このままずっと取れないのでしょうか?しびれの症状には漢方薬が効くことがあると知人から聞きましたが、抗がん薬治療終了後これほど時間が経っていても、効果があるものなのでしょうか?

(静岡県 女性 60歳)

よくならない可能性も。漢方の効果は限定的

独協医科大学越谷病院
外科主任教授の大矢雅敏さん

FOLFOX療法に用いる抗がん薬の1つにエルプラットがあります。手足などがしびれる末梢神経障害は、この薬剤による代表的な副作用です。末梢神経障害は、この治療を受けた人の約90%に現れると報告されています。かなり高い頻度で生じる副作用と言えるでしょう。

大腸がんの手術後に行われるFOLFOX療法は、再発予防を目的として、半年間12サイクルを行います。しびれはエルプラットを投与した日から現れることもありますが、治療開始から6~7サイクル目ごろから出始めることが多く、投与量に比例して多くなることがわかっています。

しびれの程度にはかなり個人差があり、比較的軽微なまま治療を完遂する人もいれば、歩行や箸を持つ、ペットボトルの栓を開ける、洋服のボタンかけをするなどの日常生活に支障が出る人もいます。それが著しい場合は治療の中断、もしくは中止を余儀なくされ、他の薬物療法に変更する場合もあります。

ただFOLFOX療法は、大腸がんの薬物療法の中でも、現在最も効果の高い治療法の1つで、これを中断・中止することはそのメリットを失うことにつながりかねません。

相談者のこれまでの経過から考えますと、今後軽快する可能性は残されるものの、残念ながらしびれは完全に消失することはないかもしれません。

また現時点ではまだ、しびれに対する特効薬はありません。漢方の牛車腎気丸ごしゃじんきがんが有効であったとする報告もありますが、臨床試験では確認できていません。有効であった報告もFOLFOX療法の施行中に牛車腎気丸ごしゃじんきがんを投与した場合のことで、治療から数年経過している人に対する効果は報告されていないのが実情です。

しかし現在、世界中で研究が進められており、今後しびれに対する有効な薬が出てくる可能性は大いにあります。

希望をつないでいただきたいと思います。

FOLFOX療法=5-FU(一般名フルオロウラシル)+エルプラット(一般名オキサリプラチン)+ロイコボリン(一般名ホリナートカルシウム)

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