ステージⅠの直腸がん 術後化学療法の効果は?

回答者・杉原健一
東京医科歯科大学 腫瘍外科教授
発行:2013年12月
更新:2014年3月

  

ステージⅠの直腸がんですが、ネットで調べていて、術後補助化学療法(アジュバンド療法)というのがあると知りました。私の場合、術後補助化学療法をやるとすれば、再発予防効果はやらない場合と比べてどれほど高まりますか。またどのような抗がん薬治療になるのですか。

(59歳 男性 長野県)

全生存率で最大5%の改善効果

東京医科歯科大学腫瘍外科教授の杉原健一さん

ステージⅠの大腸がんでは、手術でがんを取り切ることができた場合は、再発予防を目的とした術後補助化学療法は実施しないのが普通です。「再発リスクを可能な限り下げたい」というお気持ちから、「実施すればどれくらいそのリスクは下がるか?」というのがご質問の趣旨だと推察してお答えします。

海外の臨床試験に、ステージⅢの患者さんで手術のみの群と手術後に補助化学療法を行った群とを比較した試験があります。これによると、後者の再発率がいくぶん抑えられ、5年生存率(全生存率)が3~5%改善したという報告があります。これは補助化学療法を受けることによって、5年間生きられる人が、100人中3~5人増えるということを示すものです。海外のガイドラインでは、ステージⅡでも未分化がん、低分化腺がん、脈管侵襲のあるもの、腸管の壁を越えて浸潤しているものなど、再発リスクが高いと思われるケースについては、術後補助化学療法を行うという方針を示すものがあります。

臨床試験の結果を参考にすると、最大で5%の全生存率の改善が期待できますが、ご質問の方のようにステージⅠでは、仮に実施したとしても極めて限定的な効果しか見込めないと思ったほうがよいでしょう。日本ばかりでなく海外のガイドラインでも、ステージⅠの直腸がんには補助化学療法を推奨していません。

もし行うとすれば、抗がん薬はUFTやゼローダ、TS-1などの経口薬が用いられるかと思います。

UFT=一般名テガフール・ウラシル ゼローダ=一般名カペシタビン TS-1=一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム

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