直腸がんの骨転移 放射線、化学療法以外の治療法はないか?

回答者・杉原健一
東京医科歯科大学 腫瘍外科教授
発行:2013年12月
更新:2014年9月

  

2011年に直腸がんの手術とFOLFOXによる術後補助化学療法を行いました。その後、2012年に、肝転移が見つかり、肝臓の部分切除、胆のう摘出の手術を受けました。術後は、再度術後補助化学療法を始めましたが、副作用のためにエルプラットを中止。数カ月後に頸椎、胸椎、恥骨に転移が見つかったため、アバスチン、ロイコボリン、イリノテカン、5-FUによる治療を開始しました。

現在、骨転移のため頸部と股関節に痛みがありますが、放射線治療はできないため、化学療法を続けると言われています。そのほかに何か効果的な治療法はないものでしょうか?

(65歳 男性 大阪府)

ビスホスホネートと放射性物質治療の選択肢も

東京医科歯科大学腫瘍外科教授の杉原健一さん

骨転移の痛みに対する治療法で通常の外照射の放射線治療、抗がん薬以外の治療法はないかというご質問だと思います。

本来であれば、骨転移に対しては外照射による放射線治療を行うのが一般的ですが、ご質問の方の場合は何らかの理由で、この外照射放射線治療ができないものと思われます。その場合、もしビスホスホネート製剤による治療を受けてないのでしたら、この治療が選択肢の1つとなります。ビスホスホネート製剤は、異常に亢進している破骨細胞の活動などを阻害し、骨破壊を抑制する効果があります。

併せてストロンチウム89による治療も受けてはいかがでしょうか。これは、2007年秋に保険適用になった注射薬による比較的新しい治療法で、薬剤の放射性物質が骨転移細胞に集まる性質を利用したものです。放射線で骨転移したがん細胞を死滅させることにより、痛みを和らげる効果があります。

費用は、体重などにもよりますが、3割負担で約10万円程度です。また、治療を行える施設が限られているので、治療中の病院から紹介してもらう形になります。

また、ストロンチウム89治療は、骨髄抑制の副作用があるため抗がん薬との併用は不可です。そのため、ストロンチウム89治療を受ける際は、抗がん薬治療を前後併せて3カ月ほど休む必要があります。ビスホスホネートとの併用は可能です。

がんの骨転移によって、万一骨折などが起きると、生活に著しい支障が生じてしまいます。骨折を防ぐうえでもビスホスホネートと、ストロンチウム89の治療は有効です。

FOLFOX=5-FU(一般名フルオロウラシル)、ロイコボリン(一般名レボホリナート)、エルプラット(一般名オキサリプラチン)による多剤併用療法 エルプラット=一般名オキサリプラチン アバスチン=一般名べバシズマブ ロイコボリン=一般名レボホリナート イリノテカン=商品名カンプト/トポテシン 5-FU=一般名フルオロウラシル ビスホスホネート製剤=ゾメタ(一般名ゾレドロン)、ランマーク(一般名デノスマブ) ストロンチウム89=商品名メタストロン

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