直腸がんの肝転移 4回目で無治療の状態。何か治療法はないか?

回答者・大矢雅敏
獨協医科大学越谷病院外科教授
発行:2014年6月
更新:2014年10月

  

4年前に脳梗塞で入院したとき、直腸がんが見つかり手術。肝転移を3回繰り返し、その度に手術で取ってきました。今年2月に4回目の肝転移。今度はリンパ節に転移しているので手術は不適応。抗がん薬治療は脳梗塞をしているし、肝転移に効く薬もない、あとは緩和ケアしかないと言われました。4月に、腹水が溜まるようになり、ヘソの横に空いた小さな穴から水のようなものが出てきました。左腹部には鈍痛があります。現在は歩けるし食欲もあります。もう本当に治療法はないのでしょうか。

(69歳 男性 兵庫県)

抗がん薬治療の可能性の再確認を

獨協医科大学越谷病院外科教授の
大矢雅敏さん

ご相談の内容からすると確かに、肝転移を切除する手術はできない状況にあると思われます。しかし、これまでの経過では肝転移は一度にどっと何個も出てこず、手術で取れる範囲で出てきていたのですから、むしろ幸運だったと言えるのではないでしょうか。決して悲観なさらないでください。化学療法つまり抗がん薬による治療も困難と伝えられたとのことですが、結腸・直腸がんの転移(肝転移)に対して有効な抗がん薬はいくつもあります。

例えばエルプラットもしくはイリノテカンをベースに複数の抗がん薬を組み合わせたFOLFOX療法やFOLFIRI療法、またカペシタビンをベースにした療法は標準的に用いられています。

最近では分子標的薬といって、がんの増殖因子にピンポイント攻撃をして増殖を抑制する薬も出てきました。比較的副作用が少ないことが特徴です。療法が効果的で副作用も忍容できる程度であれば数年にわたって使い続けることも可能。これも通常の抗がん薬と違う点です。アバスチン、アービタックス、ベクティビックスといった薬です。

ちなみに分子標的薬を使えるかどうかは、がんのタイプによって適不適があります。切除したがんの組織を標本とした遺伝子検査をすればわかります。

そこでご相談に対する答えとしては、こういった抗がん薬治療がなぜ出来ないのか、主治医に今一度、確認してみたほうがよいかと思われます。

一般に、腹水が出ていれば抗がん薬は使いにくいのは事実です。また相談者は脳梗塞の既往があって、これも抗がん薬治療ができない理由の1つとして言われているとのことですが、どちらの理由なのか、あるいは両方の理由なのか、よくお聞きになってください。

その結果、腹水や脳梗塞の既往で、「あまり勧められない」といったような返答で、主治医が単に消極的になっているようであれば、セカンドオピニオンを取られることをお勧めします。

そのときは主治医にセカンドオピニオンを取りたい旨をはっきりおっしゃって、これまでの病気の経過を書いてもらい、CT画像などの検査データももらってください。その上でセカンドオピニオン医を訪ねるとよいでしょう。

アバスチン=一般名ベバシズマブ アービタックス=一般名セツキシマブ ベクティビックス=一般名パニツムマブ

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