直腸がんで肺転移。凍結融解壊死療法やラジオ波焼灼療法の効果は?

回答者・大矢雅敏
獨協医科大学越谷病院外科教授
発行:2016年11月
更新:2016年11月

  

当初ステージⅢ(III)Aの直腸がんということで腹腔鏡下手術を行いました。リンパ節転移がありリンパ節郭清(かくせい)もしましたが、数年後肺に転移が見つかり手術をしました。しかし、翌年にもまた転移性肺がんが見つかり、その翌年にも見つかり、結局3度転移性肺がんの手術を行いましたが、また見つかりました。医師からはもうきりがないから(これ以上肺の手術はしないほうが良い)、抗がん薬による全身投与に切り替えたほうが良いと言われました。医学書等を見ると、大腸がんの抗がん薬治療では、腫瘍は縮小することはあっても、消失することは無いと書かれています。今後はがんと上手く付き合っていくぐらいしか方法はないのでしょうか?

ちなみに遺伝子変異があって分子標的薬の効果は見込めません。凍結融解壊死療法(とうけつゆうかいえしりょうほう)やラジオ波焼灼療法(RFA)などの治療法の効果はどの程度見込めるものなのでしょうか。当方あまり経済的な余裕はないので、重粒子線治療のように何百万円もするような高額な治療は受けられません。

(69歳 男性 大分県)

効果は確立していない。まずは通常の化学療法を勧める

獨協医科大学越谷病院外科教授の
大矢雅敏さん

肺転移の手術を3回行い、再び肺への転移が見つかったということですが、これまでの手術で、どの位の範囲の肺を切除しているかが重要です。担当医師が「これ以上肺の手術はしないほうが良い」と言っているということは、既に広い範囲の肺が切除されていて、これ以上切除すると、呼吸機能の低下によってQOL(生活の質)が著しく悪化する恐れがあると判断したためだと考えます。

抗がん薬治療についてですが、この数年間で大きく進歩しており、小さな肺転移であれば、化学療法だけで長期にわたって病変の進行を抑えることが可能になってきました。ご相談者は遺伝子変異があって分子標的薬の効果は見込めないと書かれていますが、RAS遺伝子変異で使用できないのは、アービタックスやベクティビックスのみであって、アバスチンはRAS遺伝子変異の有無に関わらず使用できます。したがって、例えばFOLFOX療法やFOLFIRI療法、XELOX療法にそれぞれアバスチンを組み合わせた治療の適応はありますので、こうした薬物治療を行うことをお勧めします。

凍結融解壊死療法やラジオ波焼灼療法に関してですが、肺転移に関しては現時点で治療効果は確立されていません。もし治療を受けたいということであれば、臨床研究としてきちんと行っている施設で受けられることをお勧めします。ただし、繰り返しになりますが、化学療法によって病変の進行を長期間抑えることも可能になってきましたので、これまで1度も行っていないのであれば、まずは通常の化学療法を行うことをお勧めします。

アービタックス=一般名セツキシマブ ベクティビックス==一般名パニツムマブ アバスチン=一般名ベバシズマブ FOLFOX療法=5-FU(一般名フルオロウラシル)+ロイコボリン(一般名レボホリナート)+エルプラット(一般名オキサリプラチン) FOLFIRI療法=5-FU(一般名フルオロウラシル)+ロイコボリン(一般名レボホリナート)+イリノテカン(商品名カンプト/トポテシン) XELOX療法=ゼローダ(一般名カペシタビン)+エルプラット(一般名オキサリプラチン)

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