上行結腸がんの手術は開腹と腹腔鏡下のどちらがよいか

回答者:吉田 和彦
東京慈恵会医科大学青戸病院 副院長
発行:2009年12月
更新:2013年12月

  

内視鏡検査で、粘膜下層まで浸潤している可能性のあるがんが上行結腸に見つかりました。CT(コンピュータ断層撮影)では、リンパ節転移ははっきりしていません。早期がんではありますが内視鏡治療の適応とはならず、外科手術になると言われています。ただ、その方法には、開腹手術と腹腔鏡下手術があると言われ、迷っています。傷口と手術後の痛みは腹腔鏡下手術のほうが小さいことはわかりましたが、手術の安全性や確実性はどちらがより高いのでしょうか。手術後の外見も気になりますが、最終的にはやはり確実に治ることを望んでいます。選択するにあたりアドバイスをお願いします。

(和歌山県 女性 51歳)

A 腹腔鏡下手術の適応になる症例だが、固執する必要はない

通常の開腹手術ではおなかを10数センチほど切開しますが、腹腔鏡下手術で切開するのは4~5センチです。その点、傷口は確かに腹腔鏡下手術のほうが小さくてすみます。

腹腔鏡下手術は現在、非常に安全な手術になりました。ただし、施設によって経験の差があるため、経験例の多い施設を選んだほうがよいと思います。

腹腔鏡手術後の生存率は開腹手術と比較して、遜色ありません。

腹腔鏡下手術の手術直後の回復は、開腹手術よりも多少早いといわれています。しかし、中長期的なメリットはまだ明らかでなく、現在、臨床試験を行っているところです。現時点では、中長期的な腹腔鏡下手術のメリットは大きくはないと考えられています。

ご相談者は腹腔鏡下手術が適応になる症例といえます。ですから、経験の多い施設であれば、腹腔鏡下手術を選ぶのもよいでしょう。しかし一方では、腹腔鏡下手術に固執する必要もなく、柔軟にお考えになってください。

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