親族に大腸がん患者がいる。大腸がんは遺伝するのか

回答者:吉田 和彦
東京慈恵会医科大学青戸病院 副院長
発行:2009年8月
更新:2013年12月

  

遺伝性の大腸がんについて、お聞きします。私の実母は、50歳代で直腸がんになりました。実母の親族の1人も、大腸がんになっています。4歳上の兄も大腸がんで手術を受けています。「明日はわが身」と、思うことがあります。最近、知人との会話の中で、大腸がんは遺伝するということが話題になりました。私のように、親族に大腸がん患者がいる場合、どのような検査を受けたらよいのでしょうか。仮に、遺伝する可能性が高いとしたら、発症する前に、どのようなことに注意を払ったらよいのでしょうか。治療法は、遺伝性ではない大腸がんとは異なるのでしょうか。

(福岡県 女性 38歳)

A 遺伝する。国際的な診断基準と遺伝子検査で診断

親から子への遺伝により、発生する大腸がんもあります。遺伝性大腸がんとしては、遺伝性非ポリポーシス性大腸がん(HNPCC。別名・リンチ症候群)や、家族性大腸腺腫症(FAP)などがあります。

遺伝性非ポリポーシス性大腸がんは、遺伝子の異常を修復する因子(マイクロサテライト)の不安定性により、発生します。50歳より若年で発症、右側結腸に多く発症します。子宮内膜がんなどの他臓器がんが、併存することがあります。家族性大腸腺腫症は、大腸に無数に腺腫(ポリープ)ができる病気です。原因は、がん抑制遺伝子であるAPC遺伝子です。ポリープは15歳で60パーセント程度の割合で、がんは40歳で50パーセント程度の割合で発症します。10歳代より、手術の適応となります。

相談者は、遺伝性非ポリポーシス性大腸がんの可能性があると思います。確定診断には、国際的な診断基準、アムステルダム基準に合致し、しかも遺伝子検査が必要です。

アムステルダム基準では、血縁者に3人以上が大腸がんもしくは関連するがん(子宮内膜がん、小腸がん、腎盂・尿管がん)に罹患していて、なおかつ、以下の5つのすべての条件にあてはまることとなっています。(1)罹患者の1名は他の2名の第1度近親者(親、子、兄弟姉妹)であること(2)少なくとも継続する2世代にわたり、罹患者がいること(3)罹患者の1名は、50歳未満で診断されていること(4)家族性大腸腺腫症ではないこと(5)がんが病理検査で確認されていること―の5つです。遺伝子検査で原因がわかった場合には、子供にどう伝えるかなど、遺伝学的なコンサルテーションが必要となります。

遺伝性非ポリポーシス性大腸がんと診断された場合も、家族性大腸腺腫症と同様に、大腸がんを予防する方法はありません。1~2年ごとに便潜血検査や大腸内視鏡検査を行って、大腸がんを早期に発見し、切除する以外に方法はありません。

また、子宮内膜がんも発症する可能性があります。

そのため、婦人科で定期的に診てもらうことが必要です。1年に1回ペースで、外来で、子宮内膜細胞診の検査を受けたほうがよいでしょう。大腸がんと同様に、発見された場合には手術が基本となります。

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