直腸がんの手術後、頻便と下痢に。よい対策はないか

回答者:吉田 和彦
東京慈恵会医科大学青戸病院 副院長
発行:2009年1月
更新:2013年12月

  

直腸がん(1期)の摘出手術を受けてから3カ月が過ぎました。手術は成功し、経過は順調であると主治医に言われていますが、1日に10回以上はトイレ(排便)に行き、そのほとんどが下痢です。整腸剤を飲んでいますが、効いているようにはあまり思えません。電車に乗るときなどは紙おむつを当てなくてはならない状態です。主治医には下痢は徐々に治まっていくと言われていますが、いずれは完全に普通の便になるのでしょうか。また、食生活などで気をつけることがあれば教えてください。ちなみに、辛いものは控えていますし、好きなお酒も、直腸がんが発見されて以降は飲んでいません。

(山形県 女性 58歳)

A 時間の経過とともに徐々に回復。下痢止め薬の使用は慎重に

大腸には、大きく分けて2つの働きがあります。1つは水分を吸収すること、もう1つは便を貯めることです。

大腸の入口付近に消化物が達した時点では、その消化物は液状です。その液状の消化物は、上行結腸(大腸全体の右側に位置します)で主に水分が吸収され、徐々に固い便になり、下行結腸やS状結腸(いずれも大腸全体の左側に位置します)で主に貯留されます。その後、直腸と肛門を経て、排泄されます。

ご相談者はおそらくこの水分の吸収能力と便の貯留能力が落ちているのでしょう。こうした症状は、直腸の摘出手術を受けた患者さんではときどき見られます。肛門に近い場所で腸と腸をつなぎ合わせる手術を行った場合には、便失禁が起こることもありますが、文面から判断するには、その症状は出ていないようです。

下痢があまりにひどいときは、止痢剤(下痢止めの薬)を処方してもらって、内服するのもよいでしょうが、通常は好ましくありません。理由は主に2つあります。

1つは、下痢は人間が本来持っている自己防衛能力の1つで、それを無理に止めてしまうことになるから。もう1つは、手術後に止痢剤を服用して便秘になると、腸閉塞を起こす危険性が高まるからです。通常は整腸剤を服用し、水分を十分に補給して対応するのがよいでしょう。

禁酒をしているのはよいことで、このまま継続してください。食事は根菜類や芋類、キノコ類など、繊維質を多く含む食品は、便の量を増やすので、しばらく控えたほうがよいと思います。

主治医が言うように、時間の経過とともに、一般的には、水分の吸収能力も便の貯留能力も回復し、下痢の症状は治まっていきます。手術前に近い状態に戻る人も少なくありませんから、しばらく様子を見てはいかがでしょうか。

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