2期の直腸がん。性機能を残したい

回答者:吉田 和彦
東京慈恵会医科大学青戸病院 副院長
発行:2008年3月
更新:2014年1月

  

2期の直腸がんになり、手術を勧められています。肛門の機能は残すことができるが、勃起機能と射精機能はなくなる可能性が高いと、主治医に言われています。また同時に、あまり勧めないが、自律神経温存術を行えば、勃起機能と射精機能を残すことができるとも言われています。私は勃起機能と射精機能を残すことを希望していますが、どの治療法がよいか迷いもあります。アドバイスをお願いします。

(福島県 男性 50歳)

A 側方リンパ節をどの程度残せるかなどが問題

考えられる手術法として、まず(低位)前方直腸切除術が挙げられます。この手術は、がんを含む直腸を切除し、直腸(肛門)と結腸を吻合します。その際、リンパ節をどの程度、切除するかが問題になります。側方リンパ節郭清といって、直腸の横にあるリンパ節を郭清すると、排尿障害や性機能障害(勃起障害や射精障害)が起こる可能性があります。

また、下部直腸は骨盤神経叢に支配されていて、骨盤神経叢は直腸のほか、膀胱と前立腺を支配しています。そのため、直腸を切除する際、この骨盤神経叢を切除すると、排尿障害や性機能障害を起こす可能性があります。

2期の直腸がんの場合、3期と違って、側方リンパ節郭清や骨盤神経叢の切除を行わなければ、性機能を温存することも可能だと思います。

ただし日本では、伝統的に側方リンパ節郭清を行って、再発を防ぐことに治療の重点を置いてきました。

一方、欧米では、手術前に放射線治療を行ったうえで、縮小した手術を実施する傾向があります。とはいえ、欧米のような治療法を行えば、性機能が必ず残るという確たるデータはあまりありません。

ご相談者もお書きの自律神経温存術を行う医療施設も、近年増えています。膀胱の機能や性機能を 司 っている神経が直腸の近くにあり、この神経を残す手術が自律神経温存術です。この手術では、確かに性機能を残せる可能性がありますが、一方では、手術をしてみないと、結果を予想できない部分もあります。

性機能障害などの障害が多少起きても、再発を防ぐことをより重視するのか、それとも性機能の温存をより重視するのか、今一度よくお考えになり、場合によってはセカンドオピニオンを受けるのもよいと思います。

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