術前検査の内容は妥当か?また、腹腔鏡と開腹、どちらの手術がよいか?
81歳の義父についてご相談します。大腸の内視鏡検査を受けたところ、右側の結腸にがんが見つかりました。表面は隆起しており、外から触っても腫瘍の感触が伝わってくると義父は言います。医師から、腸管の8割ががんでふさがっている状態で、足にむくみがあり、リンパ節転移の可能性もあると言われました。「大腸X線検査」「上部消化管(胃)内視鏡検査」「単純CT検査(腹部以外)」「造影CT検査」の結果が出た後、手術日程が決まります。おそらく開腹手術になるのではないかと思います。義父自身は納得していますが、年齢や体力面を考えると、手術前の検査をもっと少なくして、腹腔鏡下で手術してほしいと考えている者も、身内にはおります。義父の現状は、胃を5分の4切除しており、肺気腫のため、片肺がほとんど機能していない状態です。脳出血が原因の後遺症が、左半身にあるほか左側の顔面にベル麻痺があります。両眼とも緑内障で、現在眼科にも通っています。このような状態で、以下について、おうかがいします。(1)上記の術前検査は妥当でしょうか。(2)腹腔鏡下手術と開腹手術では、どちらが望ましいでしょうか。腹腔鏡下手術のほうが侵襲は少ないのでしょうか。(3)術前検査を断っても、手術をしてくれる医療施設や医師は存在するでしょうか。
(茨城県 女性 52歳)
A 検査は妥当。腹腔鏡下手術にこだわる必要はない
1つずつお答えします。まず(1)についてです。結論から言いますと、いずれも妥当な検査だと思います。
大腸の内視鏡検査はお受けになっていると思いますから、「大腸X線検査」は必ずしも必要なわけではありませんが、病巣の位置と範囲、さらには副病変があるかどうかを確認するには意味のある検査です。
胃を5分の4切除されていますが、大腸がんは胃がんを併発することもありますから、「上部消化管(胃)内視鏡検査」を行うことも妥当だと思います。
「単純CT検査(腹部以外)」とお書きですが、これは胸部CT検査のことだと思います。大腸がんは肺に転移しやすいため、この検査も必要だと考えます。
大腸がんの広がり具合を確認するには、腹部の「造影CT検査」が有効です。この検査によって、肝臓にコントラストができて、肝臓に転移があるかどうかわかりやすくなると同時に、リンパ節転移の有無などの診断率が高まります。
以上のとおり、いずれの検査も妥当と考えて差し支えありません。さらにいえば、肺機能や心臓の検査、腫瘍マーカーの検査なども必要になるかもしれません。
(2)についてです。腹腔鏡下手術は、一般的には侵襲度は低いのですが、手術時間が長くなる傾向があります。 お義父様の場合、肺気腫や脳出血、81歳という年齢を考えると、開腹手術により短時間で終了したほうが、むしろリスクは少ない可能性があります。
施設によっては、腹腔鏡下手術は早期の大腸がんに限っているところもあります。
以上の点を考えると、腹腔鏡下手術にこだわる必要はないと言ってよいでしょう。
(3)についてです。まず前提として、(1)に対しお答えしたように、主治医が提示されている検査はいずれも妥当性があります。
セカンドオピニオンを受けるのは構わないのですが、手術前の検査のデータもないのに、「手術をしてください」と言われても、言われた施設や医師は困ってしまいます。
病変の広がり具合やリスクの度合いなど、最低限のデータがないと、手術はできません。ですから、まずは検査をお受けになって、その上で希望があれば別の専門家からセカンドオピニオンを聞くのがよいと思います。
治療がうまく進めば治癒する可能性もありますので、的確な診断を得るためにも、必要な検査は受けるべき、と考えます。