肛門から3センチの場所にがん。肛門は残せない?

回答者:上野 文昭
大船中央病院 特別顧問
発行:2005年4月
更新:2014年1月

  

肛門から3センチのところに直腸がんがあると診断されました。主治医からは「肛門を残しても便が漏れたりすることもあるため、肛門も含めて切除して、人工肛門にしたほうがよい」と言われました。しかし、ある雑誌で「最近では肛門から2センチまでなら肛門を残すことができる」いう記事を読みました。担当医に話すと「再発のリスクが高くなるからやめたほうがよい」と言われました。私は、人工肛門は避けたいと思っています。再発のリスクはどの程度高くなるのでしょうか。

(茨城県 男性 48歳)

A 医師の技術的要素が大きく影響します

人工肛門を回避したいというお気持ちはよくわかります。とくに48歳と比較的若いのですから当然です。しかし、若いからこそ再発のリスクを最小限にする治療を選択してほしいと思います。切除可能な直腸がんだとすれば、治療法はその浸潤の深さ、大きさ、位置などによって、(1)局所切除 (2)肛門括約筋(肛門を締める筋肉)温存手術 (3)直腸肛門切除+人工肛門の3つの選択肢があります。あなたの場合、腫瘍が肛門からかなり近い位置にあるため、(3)が標準的治療と言えます。しかし、一般的に腫瘍は肛門側に2センチ切除すれば十分と考えられていますから、肛門を残すことも可能かもしれません。ただし、この肛門温存術は、大腸を下に引っ張ってきて肛門と吻合させる大腸・肛門吻合が必要です。この技術はかなり難しく、とくに骨盤の狭い、肥満型の男性では困難が予想されます。もし、肛門温存術が可能なら治療選択の1つになると思います。

肛門温存術による再発のリスクは(3)の場合と同等です。ただし、術後のQOL(生活の質)では便失禁を伴うこともあり、個人差はありますが、満足できるものではない可能性もあります。また、術前に放射線治療や化学療法を行って、肛門温存術が可能となる場合もあります。いずれにしろ、技術的要素が治療選択に大きく影響します。大腸肛門外科医のセカンドオピニオンを求めるのが適切かと思います。

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