抗血栓薬を飲んでいる。手術のとき出血が心配

回答者:佐藤 温
昭和大学付属豊洲病院 内科助教授
発行:2007年5月
更新:2014年1月

  

精密検査で、直腸がんと診断されました。直径約3センチの腫瘍が存在し、粘膜より深く浸潤しているようです。肺や肝臓への転移は認められず、手術で切除すれば治る可能性が大きいそうです。私は2年前に脳梗塞を起こし、血液を固まりにくくさせるワーファリンという抗血栓薬を飲んでいます。そのため、大腸がんの手術の際、出血を抑えにくいかもしれないという話を聞きました。この薬によって出血が止められず、失血死する可能性もあるのでしょうか。

(神奈川県 男性 58歳)

A 手術の約1週間前から他の薬に切り換えれば心配ない

ワーファリンはビタミンKの働きを阻害することで血液凝固因子の生成を抑え、血液を固まりにくくさせる薬です。最近は脳梗塞や心筋梗塞を起こしたことのある患者さんや、脳梗塞を起こしやすいと考えられる心房細動や静脈血栓症の患者さんなどへ、積極的に投与されます。いずれも血の塊ができやすいことが原因なので、ワーファリンの服用によって血液を固まりにくくさせ、脳動脈や肺動脈、心臓の冠動脈など重要な血管が詰まるのを予防することができます。

血液を固まらせる血液凝固因子はプロトロンビンなどいくつかの種類がありますが、いずれも肝臓で生成され、その際にビタミンKが深く関与しています。

重要なのは、ワーファリンを服用してからその血液抗凝固作用が現れるまでに2~3日を要し、同じ理由で服用を中止してからも2~3日その効果が持続することです。そのため直腸がんなどの手術を行う場合、通常、手術の約1週間前からワーファリンの服用を中止し、ヘパリンという別の薬を投与することに切り換えます。

ヘパリンはワーファリンと同じ抗血栓薬ですが、非常に短時間のうちに抗凝固作用が現れたり消失したりする薬です。手術の直前にヘパリンの投与をやめれば血液が固まりにくくなることもなくなり、安心して手術を受けることができます。現在、直腸がんの手術の前の、ワーファリンからヘパリンへの切り換えは一般的に行われており、手術で失血死するという可能性はほとんどありません。ただし、血液を固まりにくくさせるワーファリンやヘパリンの投与を一時的に中止するのですから、低いながらも、患者さんによっては脳梗塞などを再発する可能性はあります。

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