大腸がんが前立腺に転移することがあるか

回答者:吉田 和彦
東京慈恵会医科大学青戸病院 副院長
発行:2008年5月
更新:2014年1月

  

4年前に、直腸がんの手術を受けました。担当医と話し合って、再発リスクなどを考えて、手術をして人工肛門をつけました。ストーマ外来で、アドバイスを受けながら、人工肛門の管理をしています。最近、PSA(前立腺特異抗原)の検査をしたところ、少し高いことがわかりました。これから、いろいろな検査が必要とのことです。前立腺がんの可能性もあるようです。お聞きしたいのは、大腸がんと前立腺がんとの関係です。大腸がんが前立腺に転移することはあるのかということです。転移ではなく、新しいがんと考えるべきなのでしょうか。それぞれの場合の治療法について、教えてください。

(大分県 男性 68歳)

A 前立腺に転移することはほとんどない

前立腺は、もともと転移が生じる可能性が非常に低い臓器です。大腸などの他の臓器から前立腺にがんが転移することはほとんどありません。また、PSAは、原発性の前立腺がんがあるときに限って上昇します。大腸がんが前立腺に転移したとしても、PSAが上がることはありません。ですから、相談者の場合、大腸がんが前立腺に転移したとは考えにくく、前立腺に新しいがんができた可能性があります。

ただし、前立腺がんの確定診断には指診、CTスキャン、MRIなどの画像診断、そして、最終的には泌尿器科での針生検が必要です。前立腺がんの治療法は、病状と程度によって無治療、放射線治療、手術、ホルモン療法など、さまざまです。前立腺がんと診断された場合は、主治医とよく相談して、治療法を決めてください。

なお、大腸がんはすでに4年たっていますから、ほぼ完治したと考えられます。人工肛門を装着していることにより、新しいがんの治療法の選択に制限を受けることはありません。

がんは、1つのがん細胞から始まるといわれています。1つのがん細胞ができるには、少なくとも6つ以上の遺伝子ならびに遺伝子関連因子の変異が必要だとも考えられています。大腸がんに関与する複数の遺伝子の変異は、他のがんの発生にも関わります。その結果、1回がんになると、がんを発症していない方と比較して、2つ目、3つ目の新しいがんを起こしやすいといわれています。重複がんになるリスクは高まります。

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