結腸の切除後、肝転移。肝動注療法は意味がない治療?

回答者:上野 文昭
大船中央病院 特別顧問
発行:2005年4月
更新:2014年1月

  

2期の大腸がんで結腸の切除を受けましたが、最近になり、肝臓に転移がみつかり、肝動注療法を受けました。その後、あるホームページに「海外のいくつもの無作為比較試験で大腸がんの肝転移に対する肝動注療法と全身化学療法を受けたグループの治療成績を比べると、生存期間に有意差はなかった」との記述があり、ショックを受けています。これは本当でしょうか。また、本当だとしたら私が受けた治療は意味がないものなのでしょうか。

(千葉県 男性 56歳)

A 全身化学療法より劣る治療法というわけではない

肝転移に対する動注化学療法は、腫瘍に血液を送っている肝動脈にカテーテル(細い管)を挿入して、抗がん剤を腫瘍の部分に優先的に注入します。理論的には抗がん剤の効果を高めて、全身への副作用を少なくする魅力的な治療法です。腫瘍の縮小効果などよい成績も報告されています。日本ではかなり行われている治療法です。

全身化学療法との優劣を評価するためには、無作為比較試験(患者さんを無作為に2つの治療法に割り当てる試験。RCTとも呼ばれる)を行う必要があります。最近、欧州で行われた肝動注療法と全身化学療法の比較試験では再発や生存期間には差がないという結果でした。ですから、ホームページでの記述に誤りはないと思います。しかし、肝動注療法を受けた場合、その後の化学療法の必要回数が明らかに少ないなどのメリットもあるようです。

また、全身化学療法ではほかの抗がん剤を用いた場合にどんな治療成績になるのか、はっきりしていません。そこで、現時点の結論としては、肝動注療法は理論的には正しいものの、そのメリットは科学的に立証されていないと言えます。ただし、この治療を受けたことを後悔したり、ショックを受けたりすることはありません。全身化学療法より劣る治療法と決め付けられたわけではありません。

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