一時的に人工肛門を造設したが肺転移。外すことは難しいか
2004年末、私の父(72歳)は肛門部分を残して上部数センチを切除しました。しかし、術後に縫合不全を起こし、一時的に人工肛門に切り替えて縫合部分がふさがってから人工肛門をはずす予定でした。ところが、その間に肺転移が見つかり、人工肛門をはずす治療が遅れています。注腸検査をした結果、「腸が細くなっていて、薬が入りません。内視鏡を使って検査をしましょう」と言われました。こうしたケースはよくあるのでしょうか。人工肛門をはずすことは難しいのでしょうか。
(福島県 女性 49歳)
A かなり難しい手術。本人の希望と体力を考慮して決定を
あなたのお父さんのようなケースは数少ないです。直腸がんの術後の縫合不全は多くても10パーセント、当病院では昨年は5パーセント、今年はゼロです。縫合不全自体が数少ないのです。しかも、縫合不全を起こして人工肛門をつなげなければいけないケースはその3分の1から2分の1ほどです。さらに、一時的に人工肛門にしている間に肺転移が起こったというのはきわめてまれな残念なケースです。
腸が細くなった原因としては(1)肛門につながる腸の血行障害(2)つなぎ目そのものが縫合不全による炎症で狭くなる、という2つが考えられます。(1)は再手術で腸と肛門をつなぎ直す手術が必要です。かなり難しい手術です。(2)は内視鏡下拡張術で狭くなった腸管を広げられます。
肺転移についてですが、切除ができる場合には切除をしたほうがよいと思います。そして、2年間は経過観察をして腸の治療は控えたほうがよいと思います。腸の手術は、肺転移の治療のあと再発のないことを確認して、ご本人の希望と体力を考慮して行うのがよいでしょう。また、肺転移の切除手術が不可能な場合にはIFL療法(5-FU+ロイコボリン+カンプト・一般名塩酸イリノテカンの3剤併用)、FOLFOX療法(5-FU+ロイコボリン+エルプラット・一般名オキサリプラチンの3剤併用)などの全身化学療法が有効です。最近、新しい抗がん剤が次々に開発されています。