大腸がんが再発。在宅療養で、痛みを抑えるよい方法は?

回答者:佐藤 温
昭和大学付属豊洲病院 内科助教授
発行:2007年5月
更新:2014年2月

  

大腸がんを再発させ、自宅で療養中の夫(63歳)が、腹部の痛みや張りなどで苦しんでいます。「腸がごろんごろんと動く」とも言います。なんとか痛みを抑えてもらいたいのですが、訪問診療医は「腹膜播種による痛みは抑えるのが難しい」と言うだけです。抗がん剤も効かなくなり、もう治療法がないので在宅療養に移行したのですが、痛みを抑えるため再入院しようかと相談したら、入院してもよい治療法はないそうです。痛みを抑える方法を教えてください。

(青森県 女性 58歳)

A モルヒネを持続的に皮下へ注入。経口摂取や皮膚に貼る方法も

腹膜播種の痛みはもちろん、腹膜播種から生じた腸閉塞の痛みや腹部膨満感、吐き気、悪心などの症状を和らげる治療法は、がんの緩和療法としてすでにしっかりと確立されています。

まず痛みは小型のシリンジポンプやバルーン型ポンプで、モルヒネを持続的に皮下に注入する「持続皮下注」で投与します。持続皮下注はワン・プッシュで簡単にモルヒネの投与量を増やせます。痛みが十分に抑えられるまで増量したら、それがご主人に最適なモルヒネ投与量といえます。

持続皮下注でモルヒネの投与量が決まったら、経口摂取が可能なときは、長時間安定した鎮痛作用が維持できるMSコンチンやカディアンなどの経口モルヒネ徐放剤の投与量に換算し、それに切り換えるという方法もあります。モルヒネが服用しにくかったり、その副作用である眠気や吐き気、便秘などが出やすかったりする場合、皮膚に貼る鎮痛薬デュロテップパッチを用いるという方法もあります。デュロテップパッチはモルヒネと同様の麻薬系鎮痛剤で、強力な鎮痛作用があります。

一方、腹膜播種から腸閉塞が生じ、痛みや腹部膨満感、吐き気、悪心などを招いているときはサンドスタチンが有効です。消化液の分泌をとめたり、腸管の水分などの吸収を促進したりすることで、腸が閉塞するために起こる腹痛や嘔吐などの消化器症状を改善します。

まだまだがんの緩和医療は十分に普及していません。各地のがん診療連携拠点病院などに連絡し、腹膜播種の痛みが抑えられる最寄りの病院やクリニックなどを教えてもらい、適切な緩和医療を受けられるようにしてあげてください。

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