大腸がん摘出手術後、肺と肝臓に転移。いい治療法はないか

回答者:大矢 雅敏
獨協医科大学越谷病院 第1外科主任教授
発行:2011年6月
更新:2014年1月

  

2006年5月1日、大腸がんの摘出手術を実施、その後、肺に多発性転移。同年11月からFOLFOX療法の点滴治療を始めました。しかし、8カ月くらいで、末梢神経障害により、手足のしびれがひどくなり、エルプラットを中止、5-FU中心の治療に切り替えました。やがて肝臓にも転移し、FOLFIRIの治療に移行、2年前からアバスチンを併用していました。しかし、昨年末ごろから腫瘍マーカーが上昇(CEA=39、CA19-9=630)、肝臓の病巣にも拡大してきていることから、担当医からは、この治療方法では効果が期待できないと言われました。分子標的薬のアービタックスは、KRAS検査の結果、変異型であることが判明し、使用不可ということです。現在は副作用に対応する牛車腎気丸とメチコバールとマグラックス、痛み止めのオキシコンチン10ミリグラムを服用しているだけで、抗がん剤治療は行っておりません。身体の状況は手足のしびれなどにより、歩行が困難ですが、食欲もあり、身長170センチ、体重68キロで、外見上は健康体と変わりません。よい治療法があれば教えてください。

(福島県 男性 78歳)

A しびれを覚悟で、FOLFOX療法を

ご相談者の方は、しびれがひどいということで、エルプラットをやめられたということですが、今後、唯一効果が期待できる治療は、やはりエルプラットを使った、FOLFOX療法だと思います。ただ、その場合、エルプラットによって引き起こされる末梢神経障害、いわゆるしびれはひどくなるかもしれません。

現在服用されている、牛車腎気丸は、エルプラットによって引き起こされる末梢神経障害に対して、ある程度効果があるといわれていますが、完全にしびれを抑えることはできません。

また、痛み止めとして出されているオキシコンチンも、末梢神経障害に対して有効かもしれないという報告がある程度で、しっかりとした臨床研究が行われているわけではありません。したがって、現時点でしびれに対して有効な手立ては確立されていないのが現状です。

しかし、だからといって免疫療法や、民間療法に頼るのも危険です。大腸がんの分野において、現時点で免疫療法は有効性がないことが証明されていますし、民間療法も科学的に証明されているものはありません。経済的な負担が大きくなるだけです。

ですから、もし抗がん剤治療をどうしても行いたいということであれば、しびれが出ることを覚悟の上で、もう1度、エルプラットを含めたFOLFOX療法を行うことが考えられます。

ただ、それが難しいということであれば、医学的にはきちんとしたエビデンス(科学的根拠)が立証されているわけではありませんが、がん休眠療法といって、少量の抗がん剤を継続的に投与する治療を推奨している医療機関もあります。そういった点も含めて、今1度、主治医の先生とご相談してみてはいかがでしょうか。

FOLFOX=5-FU+ロイコボリン+エルプラット エルプラット=一般名オキサリプラチン 5-FU=一般名フルオロウラシル
FOLFIRI=5-FU+ロイコボリン+カンプト/トポテシン アバスチン=一般名ベバシズマブ アービタックス=一般名セツキシマブ
メチコバール=一般名メコバラミン マグラックス=一般名酸化マグネシウム オキシコンチン=一般名オキシコドン

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