3期の結腸がん。腹腔鏡手術は可能か

回答者:大矢 雅敏
獨協医科大学越谷病院 第1外科主任教授
発行:2011年6月
更新:2013年11月

  

今年に入って、主人の大腸がんが発覚しました。上行結腸がんで病期は3期、リンパ節転移を起こしているということです。主治医からは開腹手術を行う旨、言われていますが、インターネットなどでみると、腹腔鏡手術といって、お腹を大きく切らずにすむ手術方法もあると知りました。主人のようなリンパ節転移がある場合、腹腔鏡手術の適応にはならないのでしょうか。できれば、体に負担の少ない手術を受けさせたいと思っています。

(愛媛県 女性 62歳)

A 可能だが、開腹手術と大差はない

通常、ご主人のような患者さんの場合、手術は開腹で行うことが多いですが、奥様がご質問されているように、腹腔鏡でも手術はできます。ただし、リンパ節転移が広範囲にわたっている場合や、がん自体が大きくて、十二指腸などに進展している可能性があるときには、腹腔鏡手術の適応はありません。なお、この場合のがんの大きさというのは、一般的に6センチといわれていて、それ以上大きいと、腹腔鏡手術の適応にはならないとされています。

腹腔鏡手術のメリットとしては、入院日数も開腹手術に比べて2日間ほど短く、痛む期間も開腹手術と比べると短いといわれています。 ただ、デメリットとしては、手術時間が開腹手術に比べて長いことがあげられます。開腹手術にかかる手術時間は、通常2時間くらいですが、腹腔鏡手術は3時間程度。また、両者ともに保険の適応にはなりますが、腹腔鏡手術のほうが、開腹手術と比べて使う器具なども多いため、自己負担する金額も10万円ほど高くなります。

さらに腹腔鏡手術は、医療施設によって、技術に差があるともいわれており、もし腹腔鏡手術を受けるのであれば、手術件数がたくさんある施設で行うことをお勧めします。

ただ、総合的に見てご主人の場合、たとえ腹腔鏡手術を行ったとしても、開腹手術と比べてそれほど大きなメリットはないかと思います。もちろん、腹腔鏡手術をどうしても受けたいということであれば別ですが、そこまで腹腔鏡手術にこだわる必要はないのではないでしょうか。

なお、現在開腹手術と腹腔鏡手術とで、術後の予後や再発率などで、どちらが優れているかを調べる臨床試験が進行中で、現時点でどちらか優れているかは、はっきりとはわかりません。恐らくその結果が今後2~3年で出るかと思います。

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