KRAS検査は何を調べるの?

回答者:大矢 雅敏
獨協医科大学越谷病院 第1外科主任教授
発行:2012年3月
更新:2014年9月

  

2年前に主人が大腸がんの2期と診断され、手術をしましたが、最近、肺転移が見つかりました。主治医の先生からは手術ができないため、抗がん剤と分子標的薬を併用しての治療を行うと言われています。ただその際に、KRASという遺伝子について調べると言われたのですが、これはどういった検査なのでしょうか。この検査の結果次第で、治療法など違ってくるのでしょうか。

(富山県 女性 62歳)

A 薬が効くかどうかを調べる

KRASというのは、がん遺伝子の1つです。大腸がんには、KRAS遺伝子に変異がある場合と無い場合があります。もし、その遺伝子に変異が無い場合はアービタックスとベクティビックスという2種類の分子標的薬剤が有効であり、反対に遺伝子に変異があった場合は、残念ながらこれらの薬剤の効果がないことがわかっています。

したがって、KRAS遺伝子に変異が無い場合は、上記の2種類の薬剤を、従来からのFOLFOX療法やFOLFIRI療法に加えると抗がん剤治療の有効性が高まることが期待できます。逆に、変異がある場合には、FOLFOX療法やFOLFIRI療法などに上記の2種類の薬剤を加えても意味はないことになります。このように、KRAS遺伝子の検査を行うことで薬剤の有効性を調べることができます。これは、治療費を抑えることにも繋がりますし、効かない抗がん剤治療による副作用を避けることもできます。

検査のほうは、保険診療で行えるため安心して受けられますし、切除した大腸がんに対して行う遺伝子検査ですので、身体的な負担になる検査ではないことも魅力です。

アービタックス=一般名セツキシマブ ベクティビックス=一般名パニツムマブ FOLFOX療法=5-FU+ロイコボリン+エルプラット FOLFIRI療法=5-FU+ロイコボリン+カンプト/トポテシン

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