高齢者の抗がん剤治療。体力的に可能?

回答者:大矢 雅敏
獨協医科大学越谷病院 第1外科主任教授
発行:2012年3月
更新:2013年11月

  

母(86歳)のことでご相談いたします。母はここ最近、便が出なくてつらいと強く訴えたため、病院に行ったところ、直腸のあたりに大きながんができていて、それが原因で便が出ないことがわかりました。すでに肝臓や肺にも転移しているとのことです。主治医からは、抗がん剤治療を行う旨、言われましたが、最近の母の様子を見ると、体力が持つかどうか心配です。もちろん治療は行いたいのですが、体力がない母でも行える抗がん剤治療などあるのでしょうか。

(千葉県 女性 55歳)

A 日常生活ができれば、抗がん剤治療はできる

やはり、高齢者に化学療法を行う場合は、副作用に耐えられるだけの体力があるかどうかということをしっかりと考えなければなりません。しかし、1日のうち半分以上を起きて活動している患者さんならば高齢であっても、通常は何らかの化学療法を行えます。

1つの目安ですが、普通に歩き、階段の昇り降りができるようであれば、FOLFOX療法やFOLFIRI療法などの、標準的な抗がん剤治療を行える場合が多いです。寝たきりや認知症の疑いがある患者さんに対しては、抗がん剤の治療を勧めることは難しいです。中間程度の人に対しては、抗がん剤の投与量を減らしたり、副作用の軽い内服薬を用いたりします。

高齢者が化学療法を受ける際の注意として、副作用には充分気を付ける必要があります。どうしても化学療法には副作用が伴いますので、患者さんのQOL(生活の質)が治療によってどう変化するのかも担当の医師とよく話合って下さい。

ただし、この方に関しますと、便が出ないという症状がありますので、がんの部分で腸閉塞になりかかっている可能性があります。そのため、抗がん剤治療の前に、便の出口を作る人工肛門を造設する手術が必要かもしれません。その場合には、術後の回復状態によって、抗がん剤での治療を行うほうが良いか否かを考えることになるでしょう。

FOLFOX療法=5-FU+ロイコボリン+エルプラット FOLFIRI療法=5-FU+ロイコボリン+カンプト/トポテシン

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