口腔底がんの術後の放射線治療。口腔周囲の外部照射のみで良いか

回答者・岸本誠司
亀田総合病院頭頸部外科部長
発行:2017年3月
更新:2017年3月

  

兄(58歳)が口腔底(こうくうてい)がんで外科手術を終えました。TNM分類でステージ(病期)Ⅱとして手術に臨みましたが、病理診断の結果、ステージⅣA、N0、M0と言われました。今後、術後補助療法として、放射線治療と化学療法を行う予定ですが、放射線科医からは「主治医より口腔周囲の外部照射のみとの指示があり、リンパ節周囲には放射線を照射しない」と言われました。患者・家族としては、リンパ節周囲にも照射して欲しいことを伝えました。放射線科医はステージⅣなので照射しても良いという意見です。その後、主治医と話しましたが、放射線を広く照射することでリスクも伴うし、放射線は同じところに1度しか照射できないので、再発したときに治療法が少なくなることや、リンパ節転移したときに手術も行いづらいことをあげ、リンパ節転移があったら手術をして切除し、放射線を照射したほうが良いと言われました。リンパ節転移が見つかったとき、肺に転移してしまう可能性について聞くと、「あります」と言われています。予後(よご)や5年生存率を考えると、リンパ節周囲まで放射線治療をしたほうが良いと考えるのですが、ご意見を頂ければと思います。

(53歳 女性 山梨県)

頸部の広い範囲に放射線照射をすることの、メリットとデメリットをよく考えて

亀田総合病院頭頸部外科部長の
岸本誠司さん

ステージⅡとの判断で切除手術をしたところ、病理検査などでⅣAだったということは、予想以上にがんが進行していたようです。顎(あご)の骨にがんが浸潤(しんじゅん)していたり、舌の筋肉など奥の組織まで腫瘍が染み込んでいたりといった状況が考えられます。

術後補助療法とは、手術後に再発の危険性がある場合に行う追加治療のことです。それほどがんが進行しておらず、手術でがん病巣(びょうそう)とリンパ節をきちんと取り切れていると考えられる場合には、術後補助療法は行いません。一般的には術後補助療法として放射線照射が行われますが、再発の危険性がさらに高い場合には放射線療法と併せて抗がん薬治療も行います。例えば原発(げんぱつ)部位の切除範囲がぎりぎりの場合や、頸(くび)のリンパ節転移が多数あったり周りに拡がるような状態であった場合です。

この方はN0と診断されたということなので、頸のリンパ節には転移がなかったということです。したがって、放射線治療と抗がん薬治療を併せて行うのは、原発部位である口腔底の切除がギリギリであったためだと思います。

さて相談者が質問されている、放射線照射の範囲を原発部位周囲のみに限るか、頸部も含めた広範囲なものにするかどちらが良いかということですが、日米のガイドラインでもまだ明確な指針は出ていません。

頸部も含め広い範囲に放射線を当てるメリットは、頸部リンパ節の再発リスクを低くすることです。しかし、この方のように再発リスクが低い場合に広い範囲に照射することで、リンパ節の再発を予防したり生存率を高めることができるといったエビデンス(科学的根拠)はありません。逆に頸の広い範囲に放射線を照射しながら抗がん薬治療を行うことで、非常に強い頸の拘縮(こうしゅく:こわばりのこと)が起こり、QOL(生活の質)の低下を来しますし、組織の強い癒着(ゆちゃく)が起こるために、万が一再発しても再度の手術が困難となってしまいます。

以上のようなメリット・デメリットをよく考えて、ご本人や担当の先生と再度相談されることをお勧めします。

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート9月 掲載記事更新!