新型コロナに対してがん患者が注意すべきこと
先日、女優の岡江久美子さんが新型コロナウイルス感染症で亡くなりました。乳がん手術後の放射線治療で免疫能が低下していたからではないか、と言われていますが、どうなのでしょうか。
私は過去に喫煙歴があり、現在、小細胞肺がんで放射線治療と抗がん薬治療を受けています。私のようながん患者が健常者以上に注意することがあれば教えください。
(60歳 男性 東京都)
A 新型コロナ以外の感染症にも注意が必要
呼吸器内科学分野教授の久保田さん
岡江さんの訃報は衝撃でした。ご冥福を心からお祈りします。
一般的には、がんに対する手術、抗がん薬治療、放射線治療は免疫機能を低下させることが知られています。がんと診断されたことによるストレス、通院に伴う疲労なども影響を与えるかも知れません。
さて、小細胞肺がんで化学療法と放射線治療を受けておられるとのこと。過去の喫煙歴も含め、新型コロナ感染症には十分に気をつける必要があります。
新型コロナウイルスは、①どこにいるのか? ②どこから感染するのか? を考えて対処しましょう。
①ウイルスは生きた細胞の中で増殖します。感染した人の涙、唾液、痰(たん)、尿や便の中に存在しています。咳(せき)やお喋りのときにウイルスを含む飛沫(ひまつ)が出てきます。
また、この飛沫がより細かいエアロゾルになって、密閉された室内の空気中に存在していまいます。さらに、飛沫が落下し、床にもかなりのウイルスが存在しています。感染した人の手にもウイルスが付着していて、触ったところにもウイルスはいるのです。
②ウイルスは粘膜から感染します。眼、鼻腔、口腔、気管支の粘膜から感染します。また、ウイルスが付着した手で眼、鼻、口を触(さわ)ることで感染してしまいます。
①、②から取るべき行動を考えてみましょう。
換気の悪い場所で、マスクをせずにお喋りしている場合はリスクが高くなります。このような場所は避けなければいけません。人が密集していても、全員がマスクをしていて、お喋りをせず静かにしてれば、感染リスクは低いでしょう。
床にウイルスが存在していますので、土足で歩ける場所に荷物を置かないようにしましょう。
また、人が触(ふ)れるものをなるべく触らないようにしましょう。そして頻繁に手洗いやアルコール消毒をしましょう。そして手で顔を触らないように気をつけましょう。
がん患者さんが健常者以上に気をつけるべきことは、新型コロナウイルス以外の感染症にも対策を取ることです。
上記以外にも、口腔ケアを適切に行いましょう。
家庭内感染を防ぐために、ご家族にも同様のウイルス対策をしていただくことも大切です。疲労を避け、バランスのとれた食事、良質な睡眠、適度な運動を行いましょう。
放射線治療終了後、6カ月ぐらいは放射線による肺炎を起こすことがあります。発熱、咳、息切れなどの症状が出た場合は、がん治療の担当医に連絡して診察を受けるようにしてください。