メラノーマに分子標的薬は使えるか?

回答者:並川 健二郎
国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科医師
発行:2012年11月
更新:2013年12月

  

メラノーマの治療に、海外では分子標的薬が使われるようになったと、インターネットを通して知りました。これはどのような薬なのでしょうか。自分は、昨年メラノーマの4期と診断され、治療中です。自分にも使える薬なのでしょうか。

(大阪府 男性 60歳)

A 有望だが、日本では治験を行っている段階

メラノーマの4期では、これまでダカルバジンという抗がん剤による化学療法が標準的な治療法でした。

ダカルバジンでも一定の効果は得られますが、臨床現場ではより有効な治療法の開発が切望されてきたのも事実です。これまで40年近く、ダカルバジンより優れた薬物療法は登場してきませんでした。ところが、ここ数年で新しく有効な治療薬がいくつか出てきました。それが分子標的薬です。

分子標的薬とは、ある特定の分子を標的とした治療薬の総称で、がんの場合には、がんの発生・増殖にかかわる遺伝子やその遺伝子の命令によってつくられるタンパク質が標的分子となります。メラノーマでもこれまでに複数の有望な標的分子がみつかっており、BRAF、MEK、KITのほか、メラノーマが宿主の免疫による駆除から逃れるために重要なCTLA-4やPD-1といった分子が挙げられます。

これまでに相談者の4期を含めた進行期のメラノーマを対象とした海外の臨床試験で、メラノーマ患者さんの生存期間を延長させる効果を証明することに成功した薬物は4つあります。CTLA-4を標的としたヤーボイ、BRAFを標的としたゼルボラフとダブラフェニブ(一般名)、MEKを標的としたトラメチニブ(一般名)です。

今回は、すでに海外でメラノーマに対する治療薬としての承認を受けているヤーボイとゼルボラフについて簡単にご紹介したいと思います。

ヤーボイは、CTLA-4とよばれる分子を標的とした、モノクローナル抗体と呼ばれる注射製剤の1つです。私たちが自分の体を異物から守るしくみを免疫監視機構といい、その免疫を担っている細胞の1つにT細胞リンパ球があります。CTLA-4は、免疫反応が過剰になった際にT細胞の表面に発現し、過剰な免疫を抑える役割をしています。

がん細胞はさまざまな方法で免疫監視機構から逃れて増殖しており、その免疫逃避の1つがCTLA-4を介した免疫抑制であるといわれています。ヤーボイは、CTLA-4に結合することで、がんに対する免疫反応が抑えられないように働き、自分の体ががん細胞を取り除く働きを助けているのです。

ヤーボイでは、進行期メラノーマを対象とした大規模な臨床試験の結果が2010年と2011年に相次いで報告されており、いずれもヤーボイを用いた治療法で生存期間が延長するという結果でした。これらの報告を受けて、2011年3月に米国で、その後欧州やオーストラリアで進行期メラノーマの治療薬としての承認を受けています。

ゼルボラフは、BRAF阻害剤という種類の薬剤で、BRAFという遺伝子に変異のあるタイプのメラノーマに効果のある飲み薬です。BRAFという遺伝子に変異があるかどうかは、がんの組織を取って行う検査で調べます。

BRAF遺伝子変異が陽性の人は、欧米人ではメラノーマ全体の5、6割程度とされており、日本人では2、3割程度ではないかと予想されています。

ゼルボラフでは、進行期メラノーマを対象とした大規模な臨床試験の結果が2011年に報告されました。この臨床試験では、BRAF遺伝子変異がある進行期メラノーマの患者さんを、ゼルボラフ群とダカルバジン群に分けて効果を比較しました。

その結果、がんを縮小させる効果(奏効率)は、ダカルバジン群の5%に比べて、ゼルボラフ群は48%と著しい効果を示しました。

メラノーマのBRAF遺伝子が変異している方のみと対象は限られていますが、非常に有望であるといえます。2011年8月に米国で承認され、その後欧州などでも承認されています。

このように、今後の発展が大いに期待されるメラノーマの薬物療法ですが、現在日本では、日本人に対する安全性と有効性を確かめるための治験が始まったところです。

治験は参加条件が厳しく、また限られた人数しか参加できないのですが、ヤーボイでは下痢や腸炎、肝障害、ゼルボラフでは皮膚がんの発生といった特異な副作用が報告されており、安全性を確保するためには必要な段階だと考えています。

ダカルバジン=一般名同様 ヤーボイ=一般名イピリムマブ ゼルボラフ=一般名ベムラフェニブ

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