悪性黒色腫で肺に転移。今後の治療法は?

回答者:並川 健二郎
国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科医師
発行:2011年1月
更新:2013年12月

  

父(78歳)が悪性黒色腫と診断されました。足の裏に腫瘍ができており、もうすでに病期は4期。肺に転移していることがわかりました。主治医からは体力的なこともあり、「手術は難しい。今後は抗がん剤を使って治療をする」と説明されました。抗がん剤だけで、どの程度、効果があるのでしょうか。他にも放射線治療や免疫療法などもあると聞いています。今後の治療法についてお聞きしたいです。

(鹿児島県 女性 43歳)

A 体力と意欲があれば抗がん剤治療を

お父様の場合、今後考えられる治療法は4つあるかと思います。(1)抗がん剤による全身治療、(2)免疫療法、(3)現在行われている臨床試験への参加、(4)支持療法――の4つです。

(1)の抗がん剤治療ですが、現在、悪性黒色腫の治療において、生存を延ばすというエビデンス(科学的根拠)があるものは残念ながらありません。ある程度効く(部分寛解)人の割合は5人に1人。非常に効く(完全寛解)人は20人に1人という割合で、なかなか有効性が認められていません。一方、抗がん剤治療をすると、全員に何らかの副作用が現れます。とくにお父様の年齢を考えると、体力やその他の合併症の有無、また治療への意欲などを総合的に加味して、抗がん剤治療を行うかどうかを判断することが大切です。

抗がん剤治療は、ダカルバジン(一般名も同様)単剤での使用が一般的で、それ以外にも、ニドラン(一般名ニムスチン)、シスプラチン(一般名)、ノルバデックス(一般名タモキシフェン)を組み合わせた治療が行われることがあります。

(2)の免疫療法はワクチン療法などを指しますが、現時点では有効性が十分とはいえません。臨床試験での実施をおすすめしますが、年齢制限などの参加条件を満たす必要があります。民間療法での実施も可能ですが、経済的負担が大きいので、あまりお勧めしません。

(3)の臨床試験への参加ですが、調べる価値はあるかと思いますが、お父様の年齢を考えると、年齢制限にひっかかってしまう可能性がありますので注意が必要です。

(4)の支持療法は、症状が出た場合に対する治療を指します。つまり、痛みが出れば、その痛みをとるような治療、水がたまれば、水を抜くような治療のことです。

一方、ご相談者が言われているような放射線治療は、骨転移に対する疼痛緩和といった局所治療として用いることはありますが、全身治療としては行いません。

以上のことを踏まえると、副作用などに耐えうる体力と意欲があれば、ダカルバジンによる抗がん剤治療を受けるのがよいでしょう。ただ、もしご年齢などを考えてそれが難しいのであれば、症状が出たときに対処する支持療法を選択するのが現実的だと考えられます。

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