日光角化症はがん?治療法は?

回答者:山崎 直也
国立がん研究センター中央病院 皮膚科医長
発行:2005年9月
更新:2013年12月

  

67歳の母のことで相談します。左頬にできたかさぶたのようなできものがなかなか治らず、病院で検査を受けたところ、日光角化症と診断されました。いろいろと調べてみると、がんと書いているものとそうでないものがあるのですが、これはどういった病気なのでしょうか。切除が治療の基本とも書いてありましたが、顔にできたものなので、傷跡や後遺症が残らないか心配です。ほかに治療法はありませんか。

(京都府 女性 42歳)

A がんの一歩手前の状態。いくつかの治療法があるが、切除手術が確実

日光角化症は、紫外線の影響で表皮の中の有棘細胞ががん化した状態のことを言います。表皮内の細胞ががん化しているので表皮内がんと呼びますが、皮膚がんの診断学では、これは前がん状態、つまりがんの1歩手前と考えています。日光角化症など表皮内がんの細胞自体はがん細胞ですが、がん細胞が非常に浅いところでとどまっているため、がんとまでは言えないという考え方です。

この表皮内がんが表皮と真皮の境目から真皮に入り、がん細胞が真皮にも見られるようになって、初めて皮膚がんと呼んでいます。

皮膚のいちばん外側である表皮には血管とリンパ管はありませんが、真皮にはそれらがたくさん存在しています。そのため、真皮にがん細胞があると、血管やリンパ管を通って、がん細胞が全身に転移していきます。このことから、皮膚がんは転移することがありますが、表皮内がんは転移しないと言えます。

ただし、表皮内がんも再発することがあります。この場合の再発とは、治ったように見えても実は治りきっておらず、再びがん細胞が発生することを意味します。つまり、日光角化症などの表皮内がんは再発はしても転移はしない、皮膚がんは再発も転移もすることがあると言えます。これが、両者の1番大きな違いです。

日光角化症の治療は、切除手術が最も一般的で、確実な治療法です。ご相談者が心配されているように、顔に傷が残る可能性はありますが、手術自体はがんの手術に比べると容易ですし、切除する範囲も小さくてすみます。切除手術が可能であるのなら、これを選択されるのが1番よいと思います。

傷跡が残るのをどうしても避けたいのであれば、切除手術以外の治療法として、液体窒素を使った冷凍凝固療法、レーザー治療、放射線(電子線)療法、抗がん剤含有の軟膏を塗布する方法などがあります。

ただし、抗がん剤含有の軟膏は、白色人種の人たちの間ではしばしば使われますが、日本人にはそれほど使われていません。

切除手術以外の治療法を選択した場合は、再発を防ぐために、定期的な経過観察が必要です。

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