有棘細胞がんの3期で、手首の切断以外の治療法は?
3カ月ほど前、有棘細胞がんと診断されました。場所は手のひらで、リンパ節転移はありませんでしたが、ステージは3期と言われました。化学療法でがんを小さくしてから手術で切除することになりましたが、十分には小さくすることができず、手首付近から先を切断する手術を行うと言われています。医師からは、手術の難しさや、取り残しのことなどを考えると、これが最も良い方法だと言われましたが、手首を残すことはできませんか。
(栃木県 男性 63歳)
A 手のひらを残すこともできるが、切断するのが望ましい
有棘細胞がんでは、皮下脂肪を越えて深く浸潤しているか、もしくはリンパ節転移があると、3期になります。皮下脂肪の下は筋肉なので、「皮下脂肪よりも深く」とは、実際には筋肉や骨にがんが浸潤していることを意味します。
有棘細胞がんの手術は通常、広さも深さも、がんより少し大きめに、余裕を持って切除します。
広さは、がんよりも幅2センチ程度広く切除します。深さは、表皮にがんがある場合はその下の真皮まで、真皮までがんがある場合はその下の皮下脂肪まで、皮下脂肪までがんがある場合はその下の筋膜と筋肉の一部を切除します。
筋肉の下は骨膜と骨です。筋肉までがんが浸潤していると、通常、骨膜や骨の一部まで切除することになります。そうすると、現実的に手を残すことは非常に難しくなります。ご相談者は手を残すことを希望されていますが、リンパ節転移のない3期ということは、がんが筋肉まで浸潤しているので、手を残すのはかなり難しいでしょう。
ただし、手を残せる可能性がまったくないわけではありません。骨の1部を削ったり、外したりして、手の形を残すことは、手のひらのがんの位置などによっては、できなくはないと思います。ただし、手の機能は非常に落ちることをご理解下さい。
また、切断する場合に比べ、がんを取り残してしまう可能性が高まるので、手を残すと、がんが根治する可能性は低くなります。逆に言うと、リンパ節転移はないのですから、切断するとがん細胞を断ち切ることができ、根治する可能性が高くなります。
ご相談者は「手首付近から先を切断する」と書かれていますが、切断した後は義手をつけることになるので、義手を装着しやすいように、切断部は手首より少し肘寄りになると思います。
手のひらが残ったときの手の機能と義手を装着した場合の機能、がんの治癒の可能性などを考え合わせてご決断下さい。