手術をせず乳頭がんを治療する方法はないですか
甲状腺乳頭がんと診断されました。腫瘍は右葉(うよう)に19㎜、左葉(さよう)に4㎜と7㎜のものがあります。医師からは多発性なので甲状腺全摘手術をするように勧められています。
私は現在、声を使う仕事をしています。甲状腺を全摘してしまうと、声への影響やだるさ・疲れを訴える人が多いと聞いています。そういった後遺症のことを考えるとなるべく手術をしたくありません。手術をせずに乳頭がんを治療する方法はないのでしょうか。またそういった研究はされているのでしょうか。
(37歳 女性 東京都)
A 安全で確実な治療法は手術以外にありません
日本医科大学大学院
内分泌外科教授の杉谷 巌さん
内分泌外科教授の杉谷 巌さん
声を使う仕事をされているので、手術に慎重になられているお気持ちはわかりますが、現状では乳頭がんに対する安全で確実な治療法は手術以外にありません。両葉の乳頭がんとの診断がなされている以上、全摘手術が妥当です。
甲状腺を切除する場合、甲状腺の後ろを通る声帯を動かす神経である左右の反回(はんかい)神経が傷つき麻痺(まひ)するリスクは確かにあります。片側の反回神経麻痺が起きると嗄声(させい:しわがれ声)になってしまいます。しかし、がんが神経に浸潤しているようなことがなければ、永久性の麻痺が残るリスクは通常、片側につき1~2%程度です。最近では術中神経モニタリングを行うことで、神経を確実に同定することもできるようになってきています。
また、術後のだるさや疲れのことも気にされていますが、甲状腺を全摘しても、甲状腺のホルモンを適量補充すれば甲状腺機能低下にはなりえないのでだるさや疲れはありません。
主治医とよく相談されて、きちんとした手術を受けられることをお勧めします。