1.4cmの乳頭がん。放射線治療がしたい
人間ドックで甲状腺に結節(しこり)があると言われ、専門医を受診。超音波検査と穿刺吸引細胞診の結果、甲状腺の右葉に1.4㎝の乳頭がんがあり、他の部位への転移はないと診断されました。医師からは手術を勧められましたが、現在胃潰瘍で治療中のため、手術で使用する薬剤の影響が心配です。また声も失いたくありません。手術ではなく、放射線治療を受けることはできないですか。
(76歳 男性 神奈川県)
A 手術が第一選択。声を失う心配はない
日本医科大学付属病院
内分泌外科部長の杉谷 巌さん
内分泌外科部長の杉谷 巌さん
乳頭がんは甲状腺がんの85~90%を占める、最も多いタイプです。その約9割はほとんど生命にかかわることのない「低危険度乳頭がん」です。
ご相談者の場合、がんが甲状腺の右側だけに限局していれば、右側だけを切り取る腺葉切除術を行い、がんが反対側にも広がっている場合は全摘術を行うのが一般的な治療法です。いずれにしても手術が第一選択で、放射線照射は適応になりません。
手術で使用する麻酔薬や抗菌薬は、消化管への負担がそれほど大きいものではありません。胃潰瘍の治療を続けながら、問題なく手術を受けられます。全摘術のあとに服用する甲状腺ホルモン薬に関しても、消化管にはほとんど影響しません。
また、甲状腺がんの手術では、がんがかなり大きくて喉頭を一緒に切除しなければならない場合以外、声を失くしてしまうことはありません。ただし、手術による反回神経(声帯を動かす神経)麻痺のリスクが1~2%あり、その場合は声がかすれたり、むせやすくなったりすることがあります。