患者さんが望む医療とは――

文:田中祐次 東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門特任助教
NPO血液患者コミュニティ「ももの木」理事長
イラスト:杉本健吾
発行:2009年12月
更新:2013年4月

  
ももイラスト

たなか ゆうじ
1970年生まれ。徳島大学卒業。東京大学、都立駒込病院を経て、米国デューク大学に留学。
現在は東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門特任助教。
2000年、患者会血液患者コミュニティ「ももの木」を設立し、定期的な交流会を続けている

みなさま。実は今回が最終回となります。長い間本当にありがとうございました。

前回書きましたとおり、患者会の活動が僕の1つの軸でした。そして、前々回には医師としての活動を書かせていただきました。こんな活動をしている僕の目指すもの、それを最後にお話させてください。

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患者中心の医療。患者視点。患者のQOL(生活の質)など、言葉はいろいろあります。でも、その目指すものは患者さんの望む医療です。ここで大切なのは主語が患者さんであることです。医師が考える患者さんの望む医療ではないのです。

ただ、患者さんは医療者には何か言いにくいと感じています。それは明らかです。僕は研修医のときから患者さんのそばでいろいろな話をしてきて、患者さんからさまざまなことを教えてもらいました。でも、患者会「ももの木」の交流会でお茶を飲み、お菓子を食べながら話を聞くと、もっと深い多くの考えが出てきます。

通常、医療者は患者さんとの関係は病院の中だけにとどめています。もちろん病院の中だけでも患者さんと医療者の間でいろいろな話をすることもあるでしょう。でも、その話は、やはり病気そのものの話が中心になってきます。その話がしたい、聞きたいと思って話をしているわけではないでしょう。でも、患者さんは、「話がしたい」という気持ちなのだと思います。

ただ、そんな機会を僕は病院の中だけでは作ることができませんでした。だから、患者会や電子メールを通じて、少しでも多くの患者さんの思いを教えてもらっています。

そして、患者さんが望む医療とは――。自分なりの言葉を見つけました。それが、今までの自分の活動の軸になっていると思っています。

先日、患者さん数名との小さな集まりがありました。その席で患者さんに、自分が見つけた「言葉」を話してみました。

賛同してくれる患者さんもいたけれど、怪訝そうな患者さんもいました。そして、もっともっと深い気がする、と教えてくれたのです。

今、もっと自分の中の深い部分を探ることで、その「言葉」が変化するかもしれない、と期待しています。だから、最終回ですが、その言葉はまだここに書かないでおきます。そして、患者さんや家族の方との相談をもっともっと続けて、自分なりに納得する「言葉」を見つけ、目標を持ちたいと思います。

3年間という長い間でしたが、皆様にお読みいただき、大変ありがとうございます。最後となりましたが、皆様からご感想などをお寄せいただけましたら幸いです。

それでは皆様また逢いましょう!!

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