「自分が……だったら」と思う気持ちが大切

文:田中祐次 東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワーク部門客員助手
NPO血液患者コミュニティ「ももの木」理事長
イラスト:杉本健吾
発行:2009年4月
更新:2013年4月

  
ももイラスト

たなか ゆうじ
1970年生まれ。徳島大学卒業。東京大学、都立駒込病院を経て、米国デューク大学に留学。
現在は東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワーク部門客員助手。
2000年、患者会血液患者コミュニティ「ももの木」を設立し、定期的な交流会を続けている

皆さんは、日本の骨髄バンクがどのようにして設立されたかご存知でしょうか? 骨髄バンクは、骨髄移植を行うために必要な骨髄提供者を募り、移植患者さんのために骨髄の提供を行ってくれます。いろいろな方の力が必要でした。そして、20年以上前にお母様より骨髄移植を受けた大谷貴子さんがその1人です。彼女の持ち味は、何と言ってもフットワークの軽快さ。僕も本当に脱帽してます。

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以前、新宿で話をしていたときのこと。「数時間後に患者さんから電話があって話をするのだけれど、そのときに電話口に出てくれない?」と大谷さんにお願いされました。もちろん快諾したのですが、さらにその患者さんが千葉に住んでいることを聞きつけた大谷さんは、「じゃぁ、今から行っちゃおうか」――もう即決でした。1時間後には患者さんの病室で、3人でおしゃべりをしていました。

そんな大谷さんは、患者さんやそのご家族からもたくさんの相談を受けます。なかでも白血病のお子さんを持つお父様からの連絡が、彼女を動かしました。

それは08年12月20日の新聞報道に関して、「骨髄移植ができなくなるのか?」という心配でした。骨髄移植に必要なキットの1つが、製造している会社の工場移転などの問題から一時供給中止になるというのです。その間の在庫は大丈夫か、移植は問題なく行われるのか、さまざまな不安がつきまといました。

この件は大谷さんも寝耳に水、何より数カ月後に骨髄移植ができなくなる可能性に憤慨し、声を上げることを決めました。そして自ら会長を務める骨髄バンク推進連絡協議会を中心に署名活動を開始しました。

実は僕も大谷さんに共感し、自分の患者会「ももの木」や院内患者会の方々に連絡して署名活動を行いました。院内患者会では、各患者会の代表の方がすぐに動いてくれて、患者会の交流会などで署名集めをしてくださいました。個人的に職場などで集めてくださった方もいます。本当に嬉しいことです。

厚生労働省、厚生労働大臣、学会、医療者もそれぞれの立場で解決に向けて活動してくれています。そして今回は、患者会や患者さん、そして家族の方など多くの人たちが支援してくれています。医療において、医療者だけではなく、多くの方が関心をもち、自分の考えで動いてくれる、とっても素晴らしいことです!!

医療を取りまく環境は、昔より複雑になっています。そんなとき、人まかせでなく医療者も患者さんも家族の方も、各自が自身の問題と捉えて活動することが大切ではないでしょうか。そうして世の中の何か1つでも変えられたらと願っています!

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