日本でも患者会が動き始めました!

文:田中祐次 東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワーク部門客員助手
NPO血液患者コミュニティ「ももの木」理事長
イラスト:杉本健吾
発行:2009年6月
更新:2013年4月

  
ももイラスト

たなか ゆうじ
1970年生まれ。徳島大学卒業。東京大学、都立駒込病院を経て、米国デューク大学に留学。
現在は東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワーク部門客員助手。
2000年、患者会血液患者コミュニティ「ももの木」を設立し、定期的な交流会を続けている

今でも覚えている、研修医のときに患者さんから言われた言葉があります。

「先生、飲み薬で白血病なおしてよ」

若くして白血病になった彼は、順調だった人生が閉ざされ、長い闘病生活を送っていました。白血病の治療は、ほとんどの方が長い入院生活が必要になります。大量の抗がん剤を受け、強い吐き気、痛み、感染症、いろいろな副作用や合併症に耐えなければいけません。その治療が繰り返されていきます。外科的な手術とはまた違ったつらさがそこにはあります。恋をして、運動をして、勉強もして、そんな当たり前の生活ができなくなっていく……。そのつらさをそばで見ていました。だから、飲み薬で治して欲しい、その言葉は10年以上たった今でもはっきりと覚えています。

そんな経験をした中で、2001年に白血病に対しての飲み薬、グリベック(一般名イマチニブメシル酸塩)が出てきました。

イラスト

2008年には、グリベックによる劇的な効果、さらには副作用が少ないということが報告されています。まさに夢の薬か、と思いました。

ただ、患者さんの口からは、別の言葉を聞くことがありました。確かに薬を中止しなければならないほどひどい副作用は少ない。けれども、「軽い」と言われる副作用はある、と。さらに、薬が高いので医療費も高い。効果があるのはありがたいが、その分、ずっと高いお金を払い続けなければいけない。いつ再発するのか分からない不安の中で――。

この言葉を聞いて、グリベックという素晴らしい薬は、病気は治せても人のQOL(生活の質)までは高められないと感じました。そして、だからこそ私たち医療者がいるのではないか、そこに医療者の本分があるのではないか、そう感じるのです。

一方、海外では患者さんが黙ってはいませんでした。お隣の韓国では、患者さんが立ち上がり、患者負担をゼロにしました。ヨーロッパ、EUの中で唯一保険適用にならなかった国・エストニアでは、患者さんが活動し、保険適用を認めさせました。そう、患者さん自らが動き出したのです。日本でも、CML(慢性骨髄性白血病)の会が動き始めました。そして6月には、患者活動が国策に強い影響を及ぼした韓国の患者さんを日本に呼んで、講演会を行うことが企画されています。

患者さんの声は患者さんが動いてくれることで、より明らかになります。そして、僕はそれが知りたい、そう思っています。

講演会は2009年6月12日金曜日18時から東京大学医科学研究所付属病院にて開催されました。
詳細はPt Support.jp をご覧ください。

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