【第四時限目】教訓!「腫瘍マーカーの数値に一喜一憂しないこと」!!

監修:吉田和彦 東京慈恵会医科大学外科助教授
発行:2004年2月
更新:2013年4月

  

腫瘍マーカーとは主にタンパク質のこと

これまで3回にわたり、「がんとはどんなものか」について考えてきました。

細胞の遺伝子が突然変異を起こして異常なまでの能力を獲得し、体内でどんどん増えて広がっていくがん細胞。このハタ迷惑な愚連隊を摘発する上で欠かせないのが、最新の診断技術です。

そこで今回からは、具体的な検査や治療の方法について、一緒に勉強していきたいと思います。

まず、がんの検査の中でも一番カンタンにできると世評が高いのが「腫瘍マーカー」です。これは血液検査だけで手軽に行えるため、今では人間ドックなどにも組み込まれています。

では、この腫瘍マーカーとはどのような検査なのでしょうか。

腫瘍マーカーとは、がん細胞や、がん細胞に刺激された正常細胞が作り出して血液や尿に放出する物質のこと。主にタンパク質ですが、ホルモンや酵素などの場合もあります。がん細胞が増えれば増えるほど、血液中の腫瘍マーカーの値が上がるので、がんの進行状態や治療の経過などをみるのに利用されています。

腫瘍マーカーにはさまざまな種類があり、それぞれに得意分野があります。たとえば、PSAは前立腺がん、CA125は卵巣がん、CA15-3は乳がんに反応するといった具合。このため、がんができる場所によって、使われる腫瘍マーカーの種類も変わってくるのです。

守備範囲は広いが悩みの種もある

こうした“ひとり一芸型”のほかに、“多芸多才型”の腫瘍マーカーもあります。

かなり古くから使われているものの中に、CEAという腫瘍マーカーがあります。これは胎児期の肝臓やすい臓などで作られるタンパク質で、大腸がんや胃がん、胆管がん、肺がん、すい臓がん、乳がんなどに反応します。

守備範囲が広くて「使えるヤツ」なのですが、がんだけに反応するわけではないのが悩みの種。糖尿病、肝硬変などの病気や喫煙でも陽性になるというのですから、ちょっと厄介です。

「腫瘍マーカーの数値が高いって言われた!」と青くなっていたらタバコの吸いすぎが原因だった、ということもありうるのですから、心臓にはよくないかもしれません。しかし、これは何もCEAだけに限ったことではないのです。そもそも腫瘍マーカーというのは、がん以外の病気や女性の生理でも陽性になる場合があるのですね。

私も子宮頸がんの治療が終わった後、定期的に腫瘍マーカー検査を受けたのですが、数回にわたって数値が上がり続けたことがあります。

そのときはヒヤリとしましたが、次の回には数値はスーッと下がり、以後はずっと正常値を保っていました。

この時期は採血がうまくいかず、なんと5、6回もブスブスと針を刺しなおして採血していたのが原因ではないかと思いましたが、傷やストレスではマーカーの数値は変化しないことになっています。しかし、採血の方法を変えてもらって一度で採血が出来るようになったら、腫瘍マーカーの数値が下がってきたんです。単なる偶然かもしれませんが、ストレスも少しは関係あるんじゃないかと私はちょっとだけ思っています。

痛みもなく、血液検査だけでできてしまう手軽さがいい

いずれにせよ、「腫瘍マーカーの数値はがん以外でも上がる」ということを患者さんはよく理解しておいたほうがいいと思います。いたずらに検査結果に振り回されて一喜一憂するようでは、かえってストレスがたまってしまいますから……。

このように、腫瘍マーカーを使った検査方法は手軽にできる反面、あまり精度が期待できないというデメリットもあります。ある腫瘍マーカーでは陽性の結果が出ても、他の腫瘍マーカーでは陰性になることもあるし、腫瘍マーカーの正常値は人によってもちがいます。また、すべてのがんをカバーする腫瘍マーカーはまだ見つかっておらず、タンパク質を出さないがんのように、適当な腫瘍マーカーを持たない場合もあります。

このため、1種類の腫瘍マーカー検査だけでがんを診断することは、まずないといっていいでしょう。普通は複数の腫瘍マーカーを組み合わせ、CTやMRI、内視鏡などを併用して、がんの診断を進めます。

苦痛をともなう検査が多い中で、痛みもなく血液検査だけでできてしまう手軽さは捨てがたい! というわけで、“腕前”はイマイチでも“人はいい”腫瘍マーカーは、今や日本中の病院でひっぱりだこ。がん検診に、治療後の定期検査にと大活躍しているのです。

関連記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート6月 掲載記事更新!