赤星たみこの「がんの授業」

【第三十五時限目】骨転移 骨折や寝たきりにならないために、骨転移についてもっと知ろう

構成●吉田燿子
発行:2006年10月
更新:2019年7月

  

赤星たみこ(あかぼし・たみこ)●漫画家・エッセイスト

1957年、宮崎県日之影町(ひのかげちょう)のお生まれです。1979年、講談社の少女漫画誌『MiMi』で漫画家としてデビュー。以後、軽妙な作風で人気を博し、87年から『漫画アクション』で連載を始めた『恋はいつもアマンドピンク』は、映画化され、ドラマ化もされました。イラストレーターで人形作家の夫・新野啓一(しんの・けいいち)さんと、ご自身を題材にした夫婦ギャグをはじめ、あらゆるタイプの漫画で幅広い支持を得ていらっしゃいます。97年、39歳の時に「子宮頸がん」の手術を受けられ、子宮と卵巣を摘出されましたが、その体験を綴ったエッセイ『はいッ!ガンの赤星です』(『はいッ!ガンを治した赤星です』に改題)を上梓されました。

皆さんは「骨転移」という言葉を知っていますか?

骨転移とは文字通り、がんが骨に転移すること。エッセイストの故・絵門ゆう子さんが、転移性乳がんによる骨転移と闘っておられたことを、ご存知の方も多いと思います。

絵門さんが乳がん患者であることを公表したのは2000年。告知を受けてしばらくは、西洋医学による治療を拒否し、免疫力向上をうたう民間療法を片っ端から試していたそうです。ところが西洋医学の治療を拒んでいるうちに、全身にがんが転移し、骨転移で首を骨折してしまいます。その後は聖路加国際病院で骨転移の放射線治療などを受け、退院後も抗がん剤を投与しながら、エッセイ執筆や講演活動などを精力的に続けていらっしゃいました。

《それにしても、首を骨折させるほどの骨転移って、なんてすさまじいものなんだろう》――絵門さんの話を聞いて、つくづくそう感じました。そんな影響もあってか、「骨転移は怖いもの」というイメージを持つ人は少なくないようです。

たしかに骨は、肺や肝臓に次いでがんが転移しやすい部位だといわれています。ところが実際には、「骨転移自体が命にかかわることはほとんどない」のだとか。最近では新しい薬剤の使用も認められ、骨転移治療の選択肢は徐々に広がりつつあります。

では、骨転移とは一体どのようなもので、現在はどんな治療法が行われているのでしょうか。今日はこのことについて勉強したいと思います。

骨を溶かす骨転移、骨を増やす骨転移

がん細胞が血液の流れに乗って骨に転移することを「骨転移」といいます。

どんながんでも骨転移する可能性はありますが、なかでも骨転移が起こりやすいのが、乳がんや前立腺がん。男性の前立腺がんの場合は4人に1人、女性の乳がんでは約半数の患者さんに骨転移がみられるとか。この他、骨転移が起こりやすいがんとしては、肺がんや甲状腺がん、腎がんなどがあります。では、骨転移はどのような場所におこりやすいのでしょうか。

骨転移が多く発生する部位は、脊椎や大腿骨、骨盤、胸椎、腰椎などです。このあたりの静脈には弁がないので血液が停滞しやすく、がん細胞がくっつきやすい構造になっているのですね。いずれも体を中心で支える大事な骨ばかり(大事じゃない骨なんてありませんけどね)。なかでも骨転移の75パーセントは、脊椎に転移するといわれています。

骨転移を放っておけば、体をしゃんと支えるはずの骨がボロボロになってしまうのですから大変です。骨折で寝たきりになってしまえば、QOLも著しく低下してしまう。だからこそ、予防的治療も含めて、日頃から骨のケアを怠らないことが大切です。

骨転移の特徴についてもう少し詳しくみていきましょう。

骨転移には大きく分けて、(1)溶骨型、(2)造骨型、(3)混合型の3つのタイプがあります。

(1)溶骨型は読んで字のごとく「骨が溶けてしまう」タイプ。乳がんや肺がん、甲状腺がん、腎がんなどに多いといわれています。

(2)造骨型のものは前立腺がんなどに多く、「骨を作って増やす」のが特徴です。

また(1)と(2)が混在する(3)混合型は、乳がんによくみられます。

このように、1口に骨転移といってもタイプが違うので、それぞれの特徴に応じた検査や治療が必要になります。

たとえば溶骨型の骨転移になると、骨が溶かされて骨折しやすくなってしまいます。

「じゃあ、造骨型は骨を増やすんだからいいじゃん!」と思ったら大間違い。骨が増えたら増えたで骨の中の神経を刺激するなどして、激しい痛みの原因となってしまいます。

この他、骨転移で注意しなければならないものに高カルシウム血症があります。骨転移が広がると、骨のカルシウムが大量に血液中に流れ出し、血中カルシウム濃度が異常に高くなります。すると、のどの渇きや食欲不振、吐き気、頭痛、骨の痛み、脱力感などに悩まされ、ときには意識障害に陥ることもあるとか。「たかがカルシウム」と油断は禁物で、何事も過ぎたるは及ばざるがごとし。ちなみに高カルシウム血症については、今ではビスフォスフォネート製剤という治療薬が使われるようになっています。

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