赤星たみこの「がんの授業」

【第六時限目】内視鏡検査・手術 内視鏡検査を受けるには医者選びが肝心

監修●鈴木雄久 本郷メディカルクリニック院長
構成●吉田燿子
発行:2004年4月
更新:2019年7月

  

赤星たみこ(あかぼし・たみこ)●漫画家・エッセイスト

1957年、宮崎県日之影町(ひのかげちょう)のお生まれです。1979年、講談社の少女漫画誌『MiMi』で漫画家としてデビュー。以後、軽妙な作風で人気を博し、87年から『漫画アクション』で連載を始めた『恋はいつもアマンドピンク』は、映画化され、ドラマ化もされました。イラストレーターで人形作家の夫・新野啓一(しんの・けいいち)さんと、ご自身を題材にした夫婦ギャグをはじめ、あらゆるタイプの漫画で幅広い支持を得ていらっしゃいます。97年、39歳の時に「子宮頸がん」の手術を受けられ、子宮と卵巣を摘出されましたが、その体験を綴ったエッセイ『はいッ!ガンの赤星です』(『はいッ!ガンを治した赤星です』に改題)を上梓されました。

がんの早期発見に最も効果があると言われているのが、内視鏡による検査です。CTやMRI、エコー(超音波検査)などの画像検査が、あの手この手で外から体内の様子を間接的に探ろうとするのに対し、内視鏡の場合はなんといっても、体の中を直接肉眼で「見る」ことができるのです。効果があるのも当然かもしれません。

この内視鏡は、もともとは診断器具として開発されたものですが、最近は治療道具も搭載されて治療にも積極的に使われるようになってきました。今では、内視鏡検査で発見した小さな早期がんを、その場で切除してしまうケースも増えています。

そこで、今回は内視鏡について学んでみたいと思います。

臓器の内部を“実況中継”する

「内視鏡」とは、口や鼻、肛門、尿道、腟などからチューブで体内に挿入する、照明付き拡大鏡のことです。一般に、腹の中を観察する内視鏡は「大腸内視鏡」、胸の中を診る内視鏡は「気管支鏡」と呼ばれています。しかし内視鏡の中で一番有名なのは、なんといっても胃カメラでしょう。

よく「胃カメラを飲む」といいますが、初期の胃カメラは、文字通りチューブの先端に小型カメラが付いたものでした。当時の患者さんは、胃壁のボンヤリした映像を撮るために、太い管を喉から胃に押し込まれ、ゴーモンのような苦しみに耐えなければならなかったのです。その後、小型カメラの代わりにファイバースコープを使う方法が普及すると、胃カメラはかなり飲み込みやすくなりました。操作も楽になり、内視鏡は胃の他にも食道や十二指腸、大腸など、消化器全般で広く使われるようになったのです。

さて、内視鏡の誕生から半世紀を経た今、医療の現場では「電子内視鏡」が主流になっています。これは、チューブの先端に付いた小型のCCDカメラで臓器の内部をテレビモニターに映し出し、“実況中継”するというもの。内視鏡のチューブの細い穴を通してさまざまな器具を挿入し、ポリープを電極で焼き切ったり、生検用の鉗子を入れて細胞を採ったりもできるというのですから、時代はずいぶん変わったものです。

検査を苦痛なくするのは医師の熟練度

内視鏡の専門医、本郷メディカルクリニック院長の鈴木雄久先生は、こんなふうに話してくれました。

「“がん年齢”に達したら、国民全員が胃カメラや大腸カメラの検査を受け、その後も定期的に内視鏡検査を受け続ける。そうすれば、がんの早期発見率は飛躍的に向上するでしょうね。ところが普通の人は、そう簡単には内視鏡検査を受けてくれない。それが一番の問題なんです」

では、内視鏡検査はなぜ普及しないのでしょうか。その最大の理由は「検査の苦痛」です。技術が進歩したとはいえ、内視鏡の管の太さ自体は10年前とそれほど変わっていないのです。カメラは小型化されたものの、鉗子孔やライトの部分の太さが変わらないため、機種によってはむしろ太くなったものもあるようです。

でも、内視鏡検査が苦痛をともなう理由は、それだけではないのです。検査が苦しいものになるかどうかは、検査を担当する医師の熟練度にかかっています。「内視鏡検査で一人前になるには、1万例はこなす必要がある」という専門医もいるほどで、内視鏡の操作というのは多くの症例をこなさないかぎり、なかなかコツをつかむことができない。大腸カメラを例にとると、大腸には大きく湾曲した3カ所の“ヘアピンカーブ”があり、この難所をクリアしてスムーズに内視鏡を出し入れするには相当の熟練を要するのだとか。なんだか車の運転と似ていますね。

実際、医療の現場では、内視鏡検査のときに器具で臓器を傷つけたり、鉗子で切除した部分からウイルス感染を起こしたり、といった事故も少なくないようです。また、時には内視鏡が患部まで入らず、検査自体が失敗するケースもないわけではありません。もし不安があるなら、内視鏡検査に熟練したお医者さんを探す手間は惜しまないほうがいいでしょう。口コミで情報を収集するもよし、過去に経験した症例数を、担当医師に直接尋ねてみるのもいいかもしれません。

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