赤星たみこの「がんの授業」

【第十七時限目】小児がん がんの治癒ばかりではなく、子供の心のケアにも光を!

構成●吉田燿子
発行:2005年3月
更新:2019年7月

  

赤星たみこ(あかぼし・たみこ)●漫画家・エッセイスト

1957年、宮崎県日之影町(ひのかげちょう)のお生まれです。1979年、講談社の少女漫画誌『MiMi』で漫画家としてデビュー。以後、軽妙な作風で人気を博し、87年から『漫画アクション』で連載を始めた『恋はいつもアマンドピンク』は、映画化され、ドラマ化もされました。イラストレーターで人形作家の夫・新野啓一(しんの・けいいち)さんと、ご自身を題材にした夫婦ギャグをはじめ、あらゆるタイプの漫画で幅広い支持を得ていらっしゃいます。97年、39歳の時に「子宮頸がん」の手術を受けられ、子宮と卵巣を摘出されましたが、その体験を綴ったエッセイ『はいッ!ガンの赤星です』(『はいッ!ガンを治した赤星です』に改題)を上梓されました。

私たちは一般に、「がん=成人の病気」であると考えています。しかし、子供に発症してしまうがんもあります。それが「小児がん」です。

「小児がん」とわざわざ銘うつのは、それが成人のがんと違う部分があるからです。もちろん、悪性腫瘍としての「がん」の本質は、成人でも子供でも同じですが、でも、小児がんには小児がん特有の世界があるのです。このことが意外に知られていないようです。

まず最初にお伝えしたいのは、小児がんの治癒率はとても高い、ということです。過去20年間に治療法がめざましく進歩したおかげで、今では小児がんの60パーセントが完治するといわれています。成人のがんに比べると、小児がんは治りやすいと言っても過言ではありません。

しかし、今でも「小児がん=死」というイメージを持つ人も多くいます。小説や映画などでも、小児がん患者が病気と闘って亡くなり、美しい思い出を残した……というものが多くありますから、どうしても小児がん=死というイメージが払拭できないのでしょう。

今回は小児がんの病気としての問題と、イメージにまつわる問題の2点を勉強していきたいと思います。

早期発見が難しい理由

まず、小児がんとは、「15歳以下の小児に発生する悪性腫瘍」と定義されます。小児1万人に1人の割合で発生し、がん全体の1パーセントにも満たないほどまれなものです。

小児がんの特徴として目立つのが、「肉腫」の多さです。肉腫とは、筋肉や骨など、上皮細胞以外にできる腫瘍のことで、体の奥深くにできます。一般に大人のがんでは、粘膜など表面に近いところにできる上皮がんが、全体の8割以上を占めています。ところが、小児がんでは上皮がんはたったの1割程度しかなく、そのほとんどが肉腫です。肉腫は体の奥にできるだけに、「外から見えにくい」ことが多いのですね。このことが、小児がんの早期発見をむずかしくする原因の1つになっています。

しかし、悲観する必要はありません。小児がんは「化学療法が効きやすい」という大きな特徴があるのです。成長期にある子供の体内では、活発な細胞分裂が行われています。その分、がんの進行も早いのですが、反面、抗がん剤も効きやすいのです! なぜなら、抗がん剤には「細胞分裂スピードの速い細胞を攻撃する」特徴があるからです。このように、「抗がん剤治療が大きな成果を挙げている」ことが、小児がんの「治りやすさ」につながっているのです。

次に、小児がんにはどのような種類があるのかを見てみましょう。実は小児と成人ではがんの種類が少しちがいます。たとえば、胃がんや肺がん、大腸がんなどは子供に発症することはほとんどありません。逆に神経芽細胞腫や網膜芽細胞腫、胚芽腫のように、子供にしか発症しないがんもあります。これらは胎生期の分化過程にある「芽細胞」ががん化することで起こるといわれています。

小児がんの中で最も多いのが、小児白血病です。これは小児がん全体の4割を占め、2~5歳の間に発症のピークを迎えます。免疫をつかさどる白血球は、骨髄の中で、「芽球」と呼ばれる細胞から生まれます。生まれたばかりの赤ちゃん細胞が分化して白血球に成長していくのですが、その途中、何かの拍子にがん化することがあります。これが白血病です。

小児白血病になると、酸素を供給する赤血球や血液を固める血小板が少なくなり、免疫力も低下します。このため貧血・発熱を起こしやすくなったり、感染症にかかりやすくなったりします。この他、わきの下や鼠径部のリンパ節や歯茎、肝臓が腫れたり、骨や関節が痛んだりすることもあります。

もう1つ、子供や若い人がかかるがんとして有名なものに、「ユーイング肉腫」があります。これは1921年にアメリカの医師ユーイングが発見した肉腫で、脚や骨盤、腕や肋骨、脊椎などの骨や体の軟部組織に発生します。

ユーイング肉腫ができると、肉腫の部分が痛んだり、骨が弱くなって骨折しやすくなったりします。治療法としては、最初に抗がん剤でがんを小さくした後、手術か放射線治療を行い、さらに残存している可能性のあるがんを叩くために、化学療法を行うのが一般的です。従来、ユーイング肉腫は「悪性度の高いがん」といわれていたのですが、近年治療法の進歩により、今では5年生存率は50パーセントを超えているそうです。

この他にも、小児がんには脳腫瘍や骨肉腫、ウィルムス腫瘍、網膜芽細胞など、さまざまな種類があります。

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