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敷地内に連携ホテルオープン、2030年には新病院完成予定! 最高の治療と創薬などを目指す国立がん研究センター東病院
千葉県柏市の国立がん研究センター東病院の敷地内に、2022年7月快適なシティホテルがオープンしました。宿泊するがん患者さんをサポートする体制の整った同センターとの連携ホテルです。患者さんのニーズに応えると同時に、最先端のがん治療や創薬を提供する国際的拠点づくりの一環にも位置づけられています。
同センターは「公民学の連携で課題解決型の街づくり」をめざす柏の葉スマートシティに立地し、2030年には新病院開業を予定。新しくオープンしたホテルを取材するとともに、国立がん研究センター東病院が目指すがん医療について、院長の大津敦さんに伺いました。
宿泊施設に泊って病院に通うアメリカ式を導入
新築の7階建て「三井ガーデンホテル柏の葉パークサイド」は、道路を隔てて45haの広大な柏の葉公園に面し、落ち着いた佇まいを見せています。エントランスを入ると広い吹き抜けのロビーにはさまざまな椅子やソファが配置され、右には開放的なレストランがあります。2階にはケアスタッフが常駐するラウンジがあり、宿泊客がリラックスして過ごせるようになっています。
ここはがん患者さんをサポートする機能を備えたホテルで、2022年7月にオープンしたばかり。国立がん研究センター東病院の南端に立地し、病院には徒歩数分という距離ですが、病院とホテル間では、シャトルバスも随時運行しています。
同ホテルがこの地に建った経緯について、三井不動産(株)柏の葉街づくり推進部事業グループ主事の高見太輔さんは以下のように説明します。
「もともとは東病院の大津院長が米国留学をされたとき、患者さんが遠方から来て病院近くの宿泊施設に滞在し、治療を受けていることに感銘を受け、日本でも実現できないか検討されていたと聞いています。一方、私ども三井不動産は、公民学連携の街づくりを推進している柏の葉スマートシティの街づくり事業者ですが、病院連携型ホテルは柏の葉スマートシティの3つのコンセプト(新産業創造、健康長寿、環境共生)の中でもとくに健康長寿を実現する事業ですので、公募型入札を経て、両者の思いが一致した結果、今回の開業につながったと思っています」
では、国立がんセンター東病院院長の大津敦さんが日本でも実現させたいと思われた米国での体験とは、どのようなものでしょうか?
「私は1997年から、世界一多くがん患者さんを診ているテキサス大学MDアンダーソンがんセンター(米国テキサス州ヒューストン)に留学しました。あるときセミナーに出ようとして病院内で迷ってしまい、ウロウロするうちに突然ホテルのフロントが目の前にあり、びっくりしたことがあります。同センターには当時すでに世界中から患者さんが集まっていました。患者さんは術後2、3日で退院し、周囲のホテルやウィークリー・アパートメントに滞在しながら治療します。医療制度の違いで米国は入院費が高いためでもあると思いますが、ミネソタ州ロチェスターにあるメイヨー・クリニックも同様でした」と大津さん。
国立がん研究センター東病院で同様の治療スタイルを検討されたのはなぜでしょうか?
「当院は今年で開院して30周年ですが、スタッフが頑張ってくれたおかげで病床の稼働率は100%を超えています。在院日数を減らしても満床状態がずっと続いているというのが背景にあります。これ以上患者さんを診るため、アメリカ式のホテル利用のスタイルを考えました。また、海外のトップがんセンターはどこも国際色豊かです。当院も海外からも患者さんが来る病院にしたいという思いもありました」
ホテル専属のケアスタッフが24時間常駐、東病院も24時間対応
実は、東病院は現在新しい病院を計画中で、2030年にオープン予定です。現在の病床数は425床、新病院は500床を予定しているそうですが、病床数は国や地域の医療計画の中で決まるものなので、増やすのは簡単ではないとのこと。
現在、入院期間は全般的に短くなっています。東病院でも薬物療法の8割は外来であり、陽子線治療を含む放射線治療も通院です。例えば、陽子線治療なら、月~金の週5日間、1回15~30分程度の治療を受けるため通院しますが、長い人ではその期間が2カ月を超えます。
通院治療中や退院直後は、何かあったら不安という患者さんも少なくありません。そういう方たちにとって、ホテルに滞在して自由に過ごしながら治療を続け、もし何かあっても対応してくれる連携ホテルはたいへんありがたい施設ということができるでしょう。それは付き添いで来院するご家族にとっても同様です。
配送ロボット「RICE」
では、三井ガーデンホテル柏の葉パークサイドでは、具体的にどのようなサービスが受けられるのでしょうか?
「専属のケアスタッフが24時間常駐して、緊急時には東病院スタッフと連携し、患者さんに対応しています。患者さんの同意が得られれば、看護師さんに個人情報をコミュニケーション・カードに記入してもらい、それをホテルが共有して食事などの要望にもお応えしています。レストランでは患者さんのご希望があれば、分量や細やかな味付けなどの変更にも応じた食事をご用意し、食事は配送ロボット『RICE』(ライス)で部屋までお届けこすることも可能です。
部屋はバリアフリーでオストメイト(人工肛門の方)対応のトイレや車いす用洗面台などが完備しており、スイートには長期滞在が可能なキッチンや電子レンジ、ランドリーも完備しています」と高見さん。
現状、コロナのため海外からの患者さんやご家族は少数だそうですが、次第に回復しつつあり、すでに陽子線治療期間中、家族で滞在されたケースもあったそうです。
大津さんは、「当院は国立であり厚労省の管轄ですから、病院の敷地内にホテルをつくることはそう簡単にいかないと考えていましたが、とても前向きに考えていただけました。今は独立行政法人(国立研究開発法人)なので、昔より自由度が上がっていますね。
連携については建築段階からホテル側スタッフと部屋、食事、アメニティなどについても話し合いを続け、患者会の皆さんにも見ていただき、ご意見をお聞きしてホテル側に対応してもらいました。その結果、病院のスタッフとホテルのスタッフとの意思疎通、情報共有ができ、ホテル宿泊中に何かトラブルが起こっても、すぐ病院で対応できる体制が整いました」
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