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無理をせず、できる範囲のセルフケアを心がけて、治療を続けていこう
つらい血液がん化学療法の副作用は治療とセルフケアで上手に付き合う

監修:小林葉子 がん・感染症センター都立駒込病院血液内科病棟次席看護師
清弘絵美 がん・感染症センター都立駒込病院血液内科病棟主任看護師
取材・文:伊波達也
発行:2011年5月
更新:2019年7月

  

清弘絵美さん がん・感染症センター
都立駒込病院
血液内科病棟主任看護師の
清弘絵美さん
小林葉子さん がん・感染症センター
都立駒込病院
血液内科病棟次席看護師の
小林葉子さん

血液がん治療を受ける患者さんやその家族にとって、化学療法の副作用はつらいもの。
ついつい神経質になったり、がんばりすぎてしまったりしがちだが、上手に付き合うにはどうしたらよいのだろうか。


初回が大切副作用治療

「血液がんの化学療法(抗がん剤治療)の副作用が厳しいのは、初回でしっかり治療すれば治療効果が上がるという方程式にのっとって、用量ぎりぎりまで抗がん剤を投与するためです。抗がん剤は正常な細胞も攻撃しますので、効き目が強ければ、副作用も比例して強く出やすいのです。そこで私たちは、いろいろな副作用に対してどのように対処していけばよいのかを常に考えています」

そう話すのは、がん・感染症センター都立駒込病院血液内科病棟主任看護師の清弘絵美さんです。

血液がんに対する化学療法は、効果がある一方で、患者さんは重い副作用に苦しむケースも多いようです。つらい副作用を少しでもコントロールして、治療を継続していくためにはどうするべきか。病院での副作用対策はもちろんですが、日常生活における患者さん自身のセルフケアの大切さを、現場に携わる看護スタッフは強調します。

今回は、化学療法の副作用のなかでも、最初に現れる「吐き気・おう吐」、そして、感染症を起こし、重篤な症状へ移行する原因にもなる「骨髄抑制」、さらに、「倦怠感」「食欲不振」にはどう対処すればいいのかを中心に、経験豊富な2人の看護師さんにアドバイスをいただきました。

[化学療法による副作用の症状が現れる経過]
図:化学療法による副作用の症状が現れる経過

提供:がん・感染症センター都立駒込病院

吐き気・おう吐は、制吐剤で未然に防ぐ

吐き気・おう吐は、副作用のなかでも明らかに患者さんのQOL(生活の質)を低下させるつらいもので、化学療法直後から5日間ぐらいに頻繁にみられる副作用です。

「吐き気・おう吐は、初めての治療で経験してしまうと、患者さんは次からの治療が怖くなってしまいますので、初回で出ないよう、私たちも大変気を遣います。そして、化学療法をやると決まった時点で副作用対策を始めます。初回はありとあらゆる吐き気止め(制吐剤)を使って、患者さんが吐かないように心がけます」(清弘さん)

吐き気・おう吐を抑える制吐剤にはさまざまな種類があり、患者さんの症状やそのときの状態に合わせて組み合わせ、症状を抑えていきます。制吐剤は吐く前に使うことが要です。セロトニン5-HT3受容体()拮抗薬()という制吐剤を、抗がん剤を投与する前に使用するのが標準的。ステロイドを併用する場合もあります。

制吐剤は急性の症状に有効で、数日後に起こる遅発性の症状は治療が難しかったのですが、2009年に承認されたNK-1受容体拮抗薬イメンド()は、遅発性の吐き気・おう吐の予防や症状緩和にも有効です。

セルフケアとしては、治療当日は食事の量を少なめにして、無理に食べないことが大切。ゆったりとした服装を心がけ、腹式呼吸などで気持ちを楽にして、自分でスッとすると思う水分を口に含んでみるなどの方法も有効です。

何よりも、あまり神経質にならないこと。また、患者さん自身が自分の吐き気・おう吐の発生時期を知っておくと心構えができ、対処しやすくなるといいます。

「吐き気・おう吐は、患者さんの精神的な不安を表す行動であることも多いです。そういう場合は神経科のカウンセリングを受けていただいたり、精神安定剤を飲んでいただいたりしてから、治療を始めることもあります」(清弘さん)

[抗がん剤の種類と吐き気]

頻度 化学療法剤 急性期おう吐への対処 遅延性おう吐への対処
シスプラチン デキサメタゾン+5-HT3受容体拮抗薬(アプレピタント) 経口ステロイドとメト クロプラミド(もしくは 5-HT3受容体拮抗 薬の投与)
シクロホスファミド、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、シタラビン、イホスファミド
ボルテゾミブ、ミトキサントロン、エトポシド デキサメタゾン
5-HT3受容体拮抗薬
必要なら制吐剤を予防的に投与
ビノレルビン、メトトレキサート、メルカプトプリン、ブレオマイシン、L-アスパラギナーゼ、ビンデシン、ビンブラスチン、ブスルファン、メルファラン、ハイドロキシウレア、フルダラビン ステロイドの予防的投与(たとえばデキサメタゾン4~8mgを化学療法の前に1回経口投与) 必要なら制吐剤を予防的に投与
出典:NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology. 2009より一部改変

受動体=体の内外から受けた刺激を有用な情報に変える中枢神経組織
拮抗薬=薬物の作用に対して逆の作用を持つ薬物
イメンド=一般名アプレピタント

感染症予防としては身の周りの清潔が第一

化学療法を行うと1~2週間後に現れるのが骨髄抑制です。骨髄抑制とは、骨髄にある白血球、赤血球、血小板の元になる造血細胞へ及ぼす作用で、白血球、赤血球、血小板の数が減り、感染や貧血、出血といった症状が現われやすくなります。

病院での治療としては、抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、場合によっては白血球を増やすG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)()など、白血球減少時の感染症対策の薬が投与されますが、感染を未然に予防するためには、患者さん自身のケアが重要だといいます。

「身の回りを清潔にすることが第一です。入院中は、ご自分が触るものは除菌剤で1日1回は拭いてもらうようにしています。埃、カビ、水回りの濡れなどは大敵です。ご家族にも習慣づけていただくと、退院後も自然とできるようになります。もちろん手洗いも大切です。爪を切っておくことも、皮膚を傷つけて出血したりするのを防ぎますので大切です」

[血球の役割]
図:血球の役割

出典:国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」

そう話すのは、同病棟次席看護師の小林葉子さんです。

赤血球の減少では、貧血が起こりますので、減少している時期には、ふらふらして転倒しやすくなります。外出を控えて、寝ている状態から急に起き上がるといったことをせずに、動作をゆっくり行うよう心がけるべきとのこと。 また、血小板が減少していると出血しやすくなりますので、転倒やケガなどには要注意です。

直射日光が強いときは、紫外線が皮膚に刺激を与えるので、あまり出歩かないことも大切です。外出する際には、なるべく肌を露出しないように心がけ、マスクと帽子と長袖は必須アイテムです。

自分でこまめに熱を測ることも大切なセルフケアです。

「入院中は、1日3回検温をしますが、それ以外にも自分で体調がすぐれない、熱っぽい、寒気がする、頭が痛いといった変調に気づいたら、すぐに熱を測る習慣をつけるといいと思います。熱は、副作用やそれに合併する病気の発症を見極める指標になりますので、検温は大事です」(小林さん)

G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)=サイトカインの一種で顆粒球産出の促進、好中球の機能を高める作用がある。G-CSF 製剤には、グラン(一般名フィルグラスチム)、ノイアップ(一般名ナルトグラスチム)などがある。



 

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