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フローズングローブの着用で障害が軽減し、QOL向上、治療も完遂
対策はある! 抗がん剤治療による爪障害のケア

監修:小林 直 東京慈恵会医科大学腫瘍・血液内科教授
立身玲子 東京慈恵会医科大学付属病院・外来化学療法室看護主任
取材・文:池内加寿子
発行:2010年5月
更新:2013年4月

  

小林 直さん 東京慈恵会医科大学
腫瘍・血液内科教授の
小林 直さん
立身玲子さん 東京慈恵会医科大学付属病院
外来化学療法室看護主任の
立身玲子さん

抗がん剤によっては、思わぬ副作用に見舞われることがあります。そんな副作用の1つが爪障害です。
爪障害の発症を遅らせたり、改善できるという、フローズングローブによる冷却法とは?


増えている爪障害

複数の抗がん剤を組み合わせる多剤併用療法が抗がん剤治療の主流となっている現在、発現する副作用も多様化しています。

その副作用の1つに爪の障害があります。乳がんや血液がんの抗がん剤治療に携わりながら、副作用対策にも積極的に取り組んでいる東京慈恵会医科大学教授で腫瘍・血液内科診療副部長の小林直さんは、爪障害についてこう話します。

「1997年にタキサン系抗がん剤のタキソテール(一般名ドセタキセル)が日本に入ってきてから、爪障害がよく見られるようになりました。アンスラサイクリン系のファルモルビシン(一般名エピルビシン)、アドリアシン(一般名ドキソルビシン)も爪障害を起こしやすい抗がん剤です。同じタキサン系でも、タキソール(一般名パクリタキセル)ではあまり多くないようです」

乳がんの術前・術後や再発後の化学療法では、タキソテールやアンスラサイクリン系の抗がん剤が含まれるレジメン(組み合わせ)がよく使われるため、爪障害で悩む女性が増えているといいます。

「爪障害が起こると、美容上の変化に加えて、指先がうまく使えなくなり、QOL(生活の質)やADL(日常生活動作)が低下して、大きな苦痛になります。さらに、化学療法中は白血球が減少して免疫力が低下するため、細菌に感染すると治癒しにくくなり、最悪の場合は、細菌が全身に回る敗血症を起こし、死に至ることもあり得ます」

爪がもろくデコボコに

写真:爪障害をきたした例
写真:爪障害をきたした例(拡大)

爪障害をきたした例。患者さんからは「本や雑誌のページがめくれない」「お札が数えられない」といった声が聞かれる

[爪障害の重症度別分類(数字が大きいほど重症)]

グレード1 変色、隆起、陥凹
グレード2 部分的または完全な爪の欠損、爪床痛
グレード3 日常生活に支障あり;

3週に1回のタキソテール投与なら5~6クール目、投与開始から2カ月くらいで爪障害が発現することが多いようです。

症状は、比較的軽度な段階(グレード1)から、日常生活ができなくなる段階(グレード3)まで3つに分けられます。

抗がん剤の投与開始時は、爪の色が黒っぽくなる「色素沈着」や「変色」などの軽度な症状でも、投与回数を重ねるごとに悪化してきます。

爪の伸びる速度や方向にムラが出て、爪が厚くなって浮き上がってきたり、「ボー線」と呼ばれる弓形の横線が入ったり、表面が極度にデコボコになる「陥没」「隆起」などが起こることもあります。爪の両側が皮膚の中に食い込んでいく「巻き爪」は、細菌感染を起こしやすく、化膿すると痛みで眠れなくなるほどの苦痛を伴います。

他にも、爪全体がもろく欠けやすくなり、ひどくなると層のように爪がはがれて(爪甲剥離)薄い角質だけが残り、出血や痛みを伴うこともまれではありません。

「感染がひどくなると、抗がん剤が効いているのにやむなく中止しなければならないケースもあります」(小林さん)

小林さんとともに爪障害に取り組む東京慈恵会医科大学付属病院の看護師である立身玲子さんが、患者さんに「爪障害で煩わしいと感じるのはどのようなときか」とヒアリングしたところ、次のような声が聞かれました。

●切符や紙を落としたときに拾えない

●本や雑誌のページをめくれない

●お札が数えられない

●家事全般で、ふたを開けたり、ビニール袋の封が切れない

●少しの衝撃で出血してしまうので、布団や洗濯が干せないし、汚してしまうことがある

●痒いところを掻けない

●髪の毛は代わりがあるけれど、爪はない

●爪の保護のためにカットばんを貼るが、ぴったりとついてしまうため剥がせない

しかしながら、従来は決め手となる対策がなく、軟膏を塗る程度でした。

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