知っておきたい、初発と再発・転移では異なる抗がん剤治療など
抗がん剤治療とうまく付き合うための7つのセオリー

取材・文:常蔭純一+がんサポート編集部
発行:2009年11月
更新:2013年4月

  

濱岡剛さん 濱岡ブレストクリニック院長の
濱岡剛さん

抗がん剤治療は、けっして楽なものではない。しかし、自分なりの対処法を持つことで、治療を続けながらも、軽やかに自らの生活を楽しんでいる人たちも少なくない。そのためには、どうすればいいのか。
乳がん患者を対象に外来抗がん剤治療を手がける濱岡ブレストクリニック院長の濱岡剛さんに、抗がん剤治療との上手な付き合い方を聞いた。


1初期治療はがんばって乗り切ろう

抗がん剤治療は、今やがん治療の命運を占うキーポイント。

その治療に臨むにあたって、患者さんはどういう点に気をつけたらいいのだろうか。濱岡ブレストクリニック院長の濱岡さんは、まず第1に大切なこととしてこう話す。

「ひとことで抗がん剤治療といっても、初期治療と再発・転移した場合の抗がん剤治療では、その考え方がまったく違います。目的も内容も治療期間も異なるということは知っておいてもらいたいですね」

初期治療は完治を目的としているため、用いる薬剤も少々強めだ。しかし、治療期間は限られている。たとえば乳がんの場合だと長くて半年間だ。

もちろん深刻な副作用が現われた場合などは治療を休止するが、「体調が順調ならがんばって乗り切ってほしいですね」。

一方、再発・転移の場合の抗がん剤治療の目的は「がんと共存しながら快適な生活を続ける」ことにある。この治療の場合は、生活重視の方針で臨みたい。

2抗がん剤治療中に仕事をやめなくてもよい

乳がん患者の中には、それまで長く仕事を続けている人も少なくない。

そんな人が治療に専念するためとはいえ、仕事を辞めてしまうと自信が揺らぎ、治療にもマイナスを与えることが少なくない。

「社会的な役割を失うことが精神的なダメージにつながり、治療にも悪影響を及ぼすことがあります。初期治療は期間限定ですし、とくに再発・転移の場合には、治療と同様に生活重視が大原則です。自分の生活を維持しながら治療を行うことが、ときに長くなる治療を乗り越えるコツでもあります」(濱岡さん)

3ライフスタイルに合わせた治療スケジュールを

たとえば乳がん治療に用いるアンスラサイクリン系の抗がん剤治療では、投与翌日から2~3日は嘔吐、倦怠感などの副作用が起こる場合が多い。

比較的強い症状が出た場合、残念ながらその間は社会的な活動は困難と考えるべきだろう。

しかし見方を変えれば、その期間以外なら普通の生活ができるということでもある。治療のスケジューリングでは、そのことを念頭に入れておく必要もあるだろう。

「たとえば仕事を続けていく場合、金曜日に治療を受けるようにして、土、日を休息にあてればよい。家族との時間を大切にするのであれば、休日に元気を回復できるようにすればいいですね」(濱岡さん)

まずは自分の暮らしを大切にすることが、治療スケジュール組み立ての原則といえる。

そうした工夫が結局は、治療を長続きさせることにもつながる。

4副作用がつらい場合はがまんしすぎない

抗がん剤治療では、脱毛、嘔吐、倦怠感、手足のしびれ、浮腫など、自覚症状のあるさまざまな副作用が現われる。その場合には、がまんをせず、医師にそのことを積極的に伝えたい。

「制吐剤をはじめとして副作用に対応するために多様な薬剤が準備されていますし、副作用がつらい場合には薬剤を換えたり、投与量を減らしたりすることも考えられます」(濱岡さん) また、場合によっては治療を休止することも考えられると濱岡さんは言う。

「副作用は仕方がないと、がまんを続けていると、身体だけでなく精神的にもダメージが蓄積するばかりで治療も長続きしない。症状を伝えていただき、必要以上に我慢しすぎないことが重要です」(濱岡さん)

医師や看護師に伝えるべきことはきちんと伝えることも抗がん剤治療とうまくつきあう勘どころの1つである。

5つらいときは医師と相談し、治療を休むことも

「日本人の国民性でしょうか。患者さんのなかには、治療を休むことを悪いことのように考える人がいます。しかし、それは考え違いなのです。休むべきときに休むことも、抗がん剤治療に取り組むうえでのポイントとなります」(濱岡さん)

治療が長期間継続する再発・転移の場合は、副作用がつらいときには主治医に治療を一定期間休むことをもちろん相談してよい。

休むことで治療も長続きする場合があり、ときには休息も治療の一端となる。

6楽しいことは積極的にどんどんやろう

とくに再発・転移の場合には、抗がん剤治療の目的は、「がんと共存しながら」充実した日々を送ることにある。

もっとも大切なことは、いかに生活を楽しむか。治療のために生活を犠牲にするのは本末転倒というもの。

旅行、趣味、コンサート、スポーツ……。

楽しいことは、積極的に取り組みたい。

「旅行に出かけたり、友達と会うので治療を休みたいという場合などは、『ぜひ休んでください』と送り出しています。それ以外でも楽しいことは、治療を後回しにしてもかまわないので、どんどんやってもらいたいと思っています」(濱岡さん)

そうして日々の生活を楽しむことが、心の健康や、治療継続のモチベーションにつながっていくのだ。

7ときには人を頼りにしよう

「自立心の強い人は抗がん剤治療を受けていても、人の力を借りようとはしない傾向にあります」と濱岡さん。

しかし、治療を続けていると、強がりをいい続けられない状況も現出する。

「抗がん剤の副作用の現われ方は、百人十色一進一退です。ときにはしびれや浮腫などの副作用で手足が思うように動かせなくなったり、関節痛などで体を動かすことが苦痛になったりすることもあります。そんなときは、自分の役割を人に任せることも大切です」(濱岡さん)

もしもの場合に備えて、家族間でサポートの方法や家事の役割分担などについて話し合っておくことも大切だろう。

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