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副作用を最小限に抑えるために、抗がん剤と抗がん剤治療について理解する
抗がん剤治療の副作用はこうして乗り切ろう

監修:田村和夫 福岡大学病院腫瘍・血液・感染症内科部長
発行:2008年4月
更新:2019年7月

  

田村和夫さん 福岡大学病院
腫瘍・血液・感染症内科部長の
田村和夫さん

抗がん剤治療の副作用は、悪心・嘔吐、脱毛、食欲不振、下痢、便秘、手足のしびれ、口内炎、白血球減少など、多種多様だ。しかも、ひどくなると、治療をストップする羽目になる。
折角出ているその効果を止めないためにも、そして日常生活を快適に送るためにも、副作用対策をきちんとしておく必要がある。


抗がん剤の副作用は多種多様

[悪心・嘔吐を起こしやすい抗がん剤]

薬剤(商品名)
メトトレキサート(メソトレキセート) ≧250mg/m2
ドキソルビシン(アドリアシン) ≧20mg/m2
シタラビン(キロサイド) ≧1g/m2
シスプラチン(ランダ、ブリプラチンなど)
エピルビシン(ファルモルビシン)
カルボプラチン(パラプラチン)
シクロホスファミド(エンドキサン)
イダルビシン(イダマイシン)
イホスファミド(イホマイド)
ダカルバジン(ダカルバジン)
ダウノルビシン(ダウノマイシン)
プロカルバジン(プロカルバジン)

がんに向き合って闘う患者にとって、大きな障害として立ちはだかるのが、治療にともなって生じる副作用だ。とくに抗がん剤を用いる化学療法などの薬物療法は外来治療が主流になりつつあるだけに、患者自身も副作用について十二分に理解し自己管理していく必要があるだろう。

では、じっさいに個々のがん治療でどんな副作用が生じるのか。そして、それに対してどんな対策があり乗り切ることができるのか。まずは抗がん剤の副作用から見ていこう。

「抗がん剤治療で生じる副作用は嘔吐、脱毛、白血球減少、下痢、便秘、皮膚・粘膜障害など多様ですが、そのなかで、もっとも一般的で多いのが悪心、嘔吐、食欲不振、下痢などの消化器症状でしょうね」

と、指摘するのは、薬物治療の副作用対策にくわしい福岡大学病院腫瘍・血液・感染症内科部長の田村和夫さんである。

これらの症状は多くの抗がん剤使用に伴って生じるが、とくに肺がん、食道がんなどで用いられるシスプラチン(商品名ランダなど)や乳がん、悪性リンパ腫などの治療に用いられるエンドキサン(一般名シクロホスファミド)、アントラサイクリン系の抗がん剤アドリアシン(一般名ドキソルビシン)、ファルモルビシン(一般名エピルビシン)などを用いた場合に顕著に現われる。なかでもとくに催吐率が高いのがシスプラチンで、何の対策もとらないとこの薬剤では90パーセントに嘔吐がともなうという。

治療が難しい遅発性の悪心・嘔吐

[悪心・嘔吐が起こる仕組み]
図:悪心・嘔吐が起こる仕組み

ところで、ひとことで悪心・嘔吐といっても大きくは治療後24時間以内に症状が出る急性症状と、それ以降に症状が現われる遅発性症状に分かれている。

田村さんによると、急性の悪性嘔吐によって、抗がん剤の代謝産物によって十二指腸や腸管などにあるEC細胞(クロム親和性細胞)と呼ばれる細胞が刺激され、セロトニンという物質が放出される。これが末梢の迷走神経上にある5-HT3受容体と結合し、その刺激が迷走神経を通って脳内に入り、CTZ(化学受容体引金帯)を介して、脳幹内の嘔吐中枢を刺激する。これが抗がん剤によって悪心・嘔吐が発生するプロセスの1つである。

しかし遅発性の場合は、このような正確な作用機序は判明していないという。当然ながらそれぞれ対策も異なっている。

「以前は急性の消化器症状に対しては、プリンペラン(一般名メトクロプラミド)やステロイド剤くらいしか選択肢はありませんでした。しかし現在では5-HT3受容体拮抗剤とステロイド剤の併用で、かなりコントロールすることができるようになっています」

これに対して、遅発性の場合は残念ながら、現在でもステロイドを中心とした治療を行っているが有効な薬剤が見当たらないのが実情だ。現実には急性の場合と同じ対策が用いられているが、効果は今1つ。そのこともあって、臨床現場では、薬物治療を行う際にあらかじめ薬剤の催吐作用の強弱を3段階に区分し、予防的治療の強度にも配慮を加えているという。

一方、遅発性嘔吐に対して、アメリカではNK1受容体拮抗剤の制吐剤、アプレピタントが承認されており、近い将来には日本でも使用できる可能性が高いと田村さんはいう。

このように、急性、遅発性と副作用の起こる時期が違っているのは悪心・嘔吐だけでなく、副作用の種類によってもそれぞれ発生時期が異なっている。急性嘔吐のように、治療直後に起こる副作用もあれば、時間が経ってから起こる副作用もある。それも2~3日後から何カ月、何年とさまざまである。このような副作用の発生時期を知っておくことは、副作用に対する心構えと準備ができ、対策を講じる意味で大切なことといえよう。

たとえばタキサン系やドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド(商品名ラステット、ベプシド)、イリノテカン(商品名カンプトなど)などの抗がん剤で起こりやすい脱毛も、有効な手立てが見当たらないのが実情だが、このことをあらかじめ知っておけば、精神的なショックを和らげると同時に、さまざまな準備もできる。とくに女性の場合には、突然だとショックが大きいので、心の準備をはじめ、かつらやウィッグ、バンダナなどを用意しておくことも大切だ。

[抗がん剤の副作用が起こる時期]

治療当日 2~3日 7~14日 14~28日 2~6月 5~6年
アレルギー反応
アナフィラキシー
血圧低下
頻脈
不整脈
めまい
発熱
血管痛
耳下腺痛
悪心・嘔吐(急性)
全身倦怠感
食欲不振
悪心・嘔吐(遅発性)
口内炎
下痢
食欲不振
胃部重感
臓器障害(骨髄、心、肝など)
膀胱炎
皮膚の角化・肥厚
色素沈着
脱毛
神経障害
免疫不全
肺線維症
うっ血性心不全
2次発がん

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