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抗がん剤ごとの副作用を理解し、対策を講じながら治療を続ける
肺がん化学療法の副作用対策

監修:山本信之 静岡がんセンター呼吸器内科部長
取材・文:池内加寿子
発行:2007年7月
更新:2014年1月

  

山本信之さん 静岡がんセンター呼吸器内科部長
山本信之さん

肺がんでは、「第3世代レジメン」と呼ばれる新しい抗がん剤の組み合わせや、分子標的薬のイレッサが使われるようになり、副作用についても新しい知識が必要になっています。
抗がん剤治療の第一人者である静岡がんセンター呼吸器内科部長の山本信之さんに副作用対策の解説と最新情報についてお聞きしました。


肺がん化学療法の最近の傾向

肺がんは、発見された時点で約6割が手術のできない進行がんといわれ、抗がん剤治療が大きな役割を担っています。最近では、1~2期の手術後の補助療法としても抗がん剤治療が有効とされ、対象も拡がってきました。

静岡がんセンターで1年間に治療した肺がん患者さん426名の内訳を見ると「手術のみ」が122名、「手術+化学療法」が26名、「化学療法のみ」が98名、「化学療法+放射線治療」が85名など、5割以上の方(計218名)がなんらかの抗がん剤治療を受けています(表1参照)。

同センター呼吸器内科部長の山本信之さんは、最近の傾向についてこう話します。

「1990年代の中ごろまでは、プラチナ製剤のシスプラチン(商品名ブリプラチンもしくはランダ)と他の抗がん剤との2剤併用療法が標準的治療法でしたが、最近では、シスプラチンと似た作用をもち、吐き気などの副作用が少ないプラチナ製剤のカルボプラチン(商品名パラプラチン)もよく使われるようになりました。その代表的なレジメン(組み合わせ)が、カルボプラチンとパクリタキセル(商品名タキソール)の併用療法で、現在、国内の肺がん化学療法の6割を占めています」

シスプラチンは腎臓に悪影響を及ぼすため、1日10数時間の点滴で水分を補給して尿中に排泄させ、腎臓への負担を軽減する必要があり、時間が長くかかります。また、強い吐き気などの副作用も起こりやすいもの。シスプラチンをカルボプラチンに替えると、シスプラチン特有の吐き気や腎臓障害が少なく、時間も短くてすむのがメリットです。

「ただし、4割の方は、カルボプラチンより若干成績のよいシスプラチンを選択されます。術後化学療法でもシスプラチンが有効とのデータが出てきました。シスプラチンはまだ必要な抗がん剤で、なくなることはないでしょう。その強い吐き気を防ぐために、最近ではいろいろな制吐剤(後述)が開発され、投与直後の吐き気は抑えられるようになりました。将来的には吐き気にあまり悩まされずに抗がん剤治療を受けられるようになると思います」(山本さん・以下同)

[表1 静岡がんセンターにおける原発性肺がんの治療別内訳(2005年)]

治療法 実数(名) 全体に占める割合(%)
手術(胸腔鏡下手術を含む)のみ 122 28.6
化学療法のみ 98 23.0
放射線治療+化学療法 85 20.0
放射線治療のみ 41 9.6
治療なし 32 7.5
手術+化学療法 26 6.1
陽子線治療のみ 8 1.9
手術+放射線治療+化学療法 6 1.4
内視鏡治療のみ 2 0.5
手術+放射線治療 2 0.5
化学療法+免疫療法 1 0.2
放射線治療+化学療法+TAE(肝動脈塞栓術) 1 0.2
内視鏡治療+化学療法 1 0.2
手術+内視鏡治療+放射線治療 1 0.2
合計 426 100
★化学療法施行者数 218 51.2
※「内視鏡的治療」は気管支鏡下の焼灼術および気道ステント挿入術を含む
(協力&資料作成/静岡がんセンター マネジメントセンター)

個々の抗がん剤特有の副作用を知って、対策を

「抗がん剤にはそれぞれ特徴的な副作用があります。副作用が同じ抗がん剤同士を組み合わせると体へのダメージが大きくなり、十分な量を使えなくなるので、2剤併用療法では、副作用が異なる抗がん剤同士を組み合わせるのが基本です」

「第3世代レジメン」(表2参照)のうち、シスプラチン主体のレジメンで、他の抗がん剤を1つ組み合わせる場合、シスプラチンによる吐き気や腎毒性に加えて、イリノテカン(商品名カンプト等)なら下痢、ゲムシタビン(商品名ジェムザール)なら血小板減少にも注意が必要です。カルボプラチンとパクリタキセルの組み合わせでは、パクリタキセルによるしびれなどの末梢神経障害や脱毛が起こりやすくなります。

抗がん剤決定の際は、効果と副作用を考慮して選ぶことが求められます。

「海外の文献によると、肺がんの抗がん剤治療により命を落とす可能性も1~3パーセント程度あります。原因になりうるのは、白血球減少による感染症や肝臓障害、イレッサ(一般名ゲフィチニブ)による薬剤性肺炎など。これらは検査でわかるので、こまめに血液検査等をして早期に発見し、早めに対策をたてることが大切です。なお、吐き気や下痢、しびれなど自分でわかる副作用は、起こったらすぐに医師やナースに伝えるようにしてください」

[表2 肺がん化学療法の変遷]
表2 肺がん化学療法の変遷

現在の標準治療は、「第3世代レジメン」。シスプラチンまたはカルボプラチンと、90年代後半に登場した5つの抗がん剤のうち1つを2剤併用で使う

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