がんのチーム医療・施設訪問6 国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)

サポーティブケアセンターを新設 より積極的な患者支援と地域連携を目指す

取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2014年12月
更新:2015年3月

  

幅広いサポートで「総合的な医療」を届けたい
後藤功一さん 国立がん研究センター東病院サポーティブケアセンター室長(呼吸器内科科長)

がん患者さんの悩みは多岐にわたります。治療に関することはもちろんですが、生活上の問題、そして社会生活に関わる問題もあります。治療に関する問題よりも、社会的問題の方が大きな場合にもしばしば遭遇します。

医師が、治療とは直接関係ないような全ての社会的問題へ支援を行うのは、実際には困難であり、患者さんを支えるには、医師以外の多職種のサポートが必要になります。

緩和ケアにとどまらない支援

当院では、がんに対する治療はもちろんですが、患者さんの闘病を心や知識の面から支えることを非常に重視しています。これまでも患者さんの状況に応じた院内の多職種の連携はあったのですが、その都度ごとの対応でした。

それを統合し、しっかりと多職種で体制を組んで病院全体として患者さんに「総合的な医療」を届けようと、当院のプロジェクトとして「サポーティブケアセンター/がん相談支援センター」を今年(2014年)4月に設置したのです。

これまで「サポーティブケア」という言葉には、積極的な治療が終了した後の緩和ケアのイメージが強くありましたが、我々が目指しているのは、症状緩和の支援だけではありません。仕事を継続したり、家族関係を良好に保ちながら、少しでも快適に闘病できるような、あらゆる社会的な問題をカバーできる支援を目指しています。

早期からのサポートで QOLを改善する旗振り役に

院内の多職種連携の後は、外部との連携、ネットワーク作りです。院内に核となる組織があれば、外部とも連携しやすくなります。現在、サポーティブケアセンターでは、地域の病院との連携体制の構築も積極的に進めています。

数年前、海外の有名な医学誌にある論文が掲載され話題になりました。肺がん患者を対象に、治療開始早期から緩和ケアが導入されると、標準治療と比較して生存期間が延長したという研究でしたが、できるだけ早期から症状コントロール、社会的支援を行ったほうが長生きするというエビデンス(科学的根拠)が出たのです。

治療初期からのサポートでQOL(生活の質)が改善するというのは明らかであり、病院は出来るだけ早期から支援を開始する必要があります。

その旗振り役となるべく、サポーティブケアセンターの機能充実と拡大を図っていきたいと思います。

より幅広い専門家からなる「サポーティブケアセンター/がん相談支援センター」

千葉県柏市の郊外にある国立がん研究センター東病院には、近隣だけでなく広い地域から様々な患者さんがやってくる。最新設備と技術はもちろんだが、本人や家族の素朴な疑問や深刻な悩みに応える体制も充実させている。2014年4月に、従来の「患者・家族支援相談室/医療連携室」を、より幅広い専門家からなる「サポーティブケアセンター/がん相談支援センター」に改組した。

サポーティブケアセンター/がん相談支援センター窓口

左から後藤さん(室長)、坂本さん(がん相談統括専門職)、栗原さん(副室長)

相談を受けるだけではなく 患者ニーズに合った支援センターへ

化学療法中なのですが、仕事中に吐き気が出て困っています。職場の理解を得るにはどうしたらいいでしょうか」

「通院治療している父が最近ふさぎこんでいます」

国立がん研究センター東病院の「サポーティブケアセンター」の電話は途切れることがない。その2倍以上の対面相談と合わせ、年間の新規相談は約5,000件にも及ぶ。

「相談件数は右肩上がりで増えています。話をただ聞くだけでなく、患者さんが次の一歩をどう踏み出せばいいのかイメージできるようにお手伝いしています」

同ケアセンターに所属する認定医療社会福祉士(がん相談統括専門職)の坂本はと恵さんが、10年ほど前に「相談窓口」の担当になった時、スタッフは坂本さん1人だけだった。

「内容に応じて専門部署と連絡を取り合いながら対応して来ましたが、患者さんのニーズにより速く、適切に応えられるように組織が整えられることになりました」

図1 サポーティブケアセンター/がん相談支援センター業務の構造

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