がんのチーム医療・施設訪問12
聖路加国際病院緩和ケアチーム(東京都中央区)

充実した医療スタッフのもとで、層の厚い緩和ケアを提供

取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2015年6月
更新:2016年9月

  

敬意をもって患者さんに接し、温かみのあるケアを提供する
林 章敏さん 聖路加国際病院緩和ケア科部長

敬意をもって接することが基本

緩和ケアにおいては、敬意をもって患者さんに接するのが基本だと考えています。そして温かみのあるケアを提供する、これが最も大事な点です。カンファレンスでも、洗礼を希望する患者さんのいることが報告されていましたが、緩和ケアの最終的な役割はスピリチュアルに関するものであると思っています。

「パラレルケア」を実施

本院の緩和ケア外来では、1日12~13人を2人の医師で診察に対応しています。患者さんは再診の方が10人、初診の方が2~3人の割合です。初診の患者さんに対しては、事前に看護師が1時間かけて面談し、問診を行っています。また本院の緩和ケアの特徴は、疾患治療をしながら、緩和ケアも行う併診「パラレルケア」を実施している点です。

緩和ケアチームは毎朝病棟回診を行っていますが、私自身は毎朝7時30分から9時の間に自分で病棟を一巡。その後、緩和ケアチームから回診状況を聞くことにしています。

緩和ケア医の役割は、依頼のあった担当医にそれぞれの対応策を提示するもので、最終的な判断は担当医に行ってもらっています。

がん以外の総合的なケアも

本院は総合病院として、がんだけでなく、生活習慣病などの一般的な疾患から専門領域の疾患まで、非常に質の高いケアが行われているため、がん患者さんが他の疾患を合併した場合でも安心して治療が受けられます。

施設内では、疾患領域間での垣根がなく、多くのスタッフが呼吸器科、消化器科、乳腺外科、循環器科などのカンファレンスに出席し、各領域からの意見を述べるとともに、各診療科の専門知識や新しい情報を入手することが可能です。緩和ケア科のスタッフも、各カンファレンスに出席し、緩和ケアの普及に努めています。

がん以外の疾患にも緩和ケアを広めたい

緩和ケアでは、今後がん以外の疾患患者に対する緩和ケア、つまり非がんに対する緩和ケアを広めることが重要になってくると思います。また、超高齢化社会の到来に伴い、今後在宅ケアの広がりが予測されることから、病診連携をより深めていく必要があると考えています。

最高の医療を最良のホスピタリティで

聖路加国際病院外観

都心の築地にある都内でも有数の大規模総合病院である聖路加国際病院。「最高の医療を最良のホスピタリティで」をモットーとする同院では、がん患者に対して、治療と緩和ケアを並行して進める、いわゆる「パラレルケア」を提唱している。同院の緩和ケアチームの1日の活動に密着した。

毎朝8時から病棟回診

早朝8時前、緩和ケア病棟のある10Fのスタッフルームで、その日の回診スケジュールを確認した後、1時間をかけてチームスタッフ全員の病棟回診が始まる。病棟回診は毎朝行われており、回診先は1日平均15~20件。その内の9割ががん患者さんで、残りはICU(集中治療室)など他領域の患者さんの病棟となる。

取材で同行したチームには、緩和ケア科医の松田洋祐さん、同認定看護師の後藤朝香さんほか、精神腫瘍科医の保坂隆さん、薬剤師の髙地恵市さんらが参加していた。

回診依頼のあった各階病棟の患者さんの部屋を訪れ、優しく語りかけながら詳細に症状や希望を聴き取ると同時に、いくつかの対処法を提示し、患者さんの意向を確認する。一見単純な作業のようだが、患者さんの意向をしっかりと把握しておかないと、後々、対応にズレが生じ、十分なケアができなくなる原因にもなる。

入室の許諾が得られた病室では、大腸がんの手術を受け、2週間ほど入院している60歳代の女性が症状を説明するとともに、家庭の事情もあり、入院期間が過ぎたあとは、緩和ケア病棟への移動を希望していた。がんの病変部すべてが摘出できておらず、このまま同院での入院の継続を選択したいとのことだ。

病室の外で松田さんが、同行スタッフに指示を与える。また別の階の廊下では、松田さんが腫瘍内科医の扇田信さんと抗不安薬の使い方について話合い、適切な処方を提示する場面も。

松田さん:▲回診で患者さんの状況を確認する▼同行スタッフに指示をする

松田さん:▲腫瘍内科医の扇田さんと対策を協議

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