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尿管がん エックス線&CT造影検査
尿管が太く、白い影が出なければ、がんを疑う
もりやま のりゆき
1947年生まれ。1973年、千葉大学医学部卒業。米国メイヨークリニック客員医師等を経て、89年、国立がん研究センター放射線診断部医長、98年、同中央病院放射線診断部部長で、現在に至る。ヘリカルスキャンX線CT装置の開発で通商産業大臣賞受賞、高松宮妃癌研究基金学術賞受賞。専門は腹部画像診断
患者プロフィール
73歳の女性Qさん。左背部の痛みが次第に増強したため、整形外科を受診したが、原因がよくわからず経過を見ることになった。ところが、血尿が出たので驚き、総合病院を受診。がんの疑いを指摘され、国立がん研究センター(現国立がん研究センター)を紹介される。造影剤を尿路に入れて写すエックス線、およびCT検査で尿管がんが見つかる。
血尿や鈍い背部痛などの症状が出やすい
腎臓で作られた尿を膀胱へ導くのが尿管です。成人だと長さは30センチ前後、太さは直径5ミリぐらいです。一般に、がんは自覚症状が乏しいのですが、尿管にがんができると、比較的早い段階から血尿や背部痛(*)の症状が出やすいようです。
血尿が出れば、誰もが尿路の異常を疑いますので、がんが見つかりやすいのですが、背部痛のみだと、他の疾患と間違え、発見が遅れがちになるので注意が必要です。
「早期の尿管がんの背部痛は、鋭い痛みではなく、つっぱったような、重たいような感じの鈍痛であることがほとんどで、尿管に沿って痛みが縦方向に移っていくこともあります。
その痛みは、整形外科などで投薬や湿布などの治療を受けても治まりません。その場合は他の診療科へ行き、それまでの経過を伝えることが重要です」(森山さん)
*背部痛=背中にでる痛み
尿路が造影されるかを見る
尿管の異常を疑って検査をする場合、広く行われているのが経静脈的尿路造影エックス線検査です。腕などの静脈から造影剤を入れ、尿路に達する頃合いを見はからってエックス線撮影をします。
Qさんの検査写真をご覧ください。正面から見た写真なので、左右は逆になります。
「右腎で作られた尿を尿管へ導く腎盂が白く写り、そこから下方に延びている尿管も、うっすらと白く写っているのがわかります。この白い影は造影剤で、腎を通過して腎盂、尿管に正常に到達していることを表します」(森山さん)
それと比べて、反対側の左腎の様子は全く違います。
「腎盂も尿管もどこにあるのかよくわかりません。造影剤が到達していないから、腎盂や尿管が造影されずに白い影が写っていないのです。このことから、尿路のどこかに異常があることが考えられます。このように、尿路の造影エックス線検査は、尿路の広い範囲を調べるときに有用なのです」(森山さん)
経静脈的尿路造影エックス線検査の画像
造影されない左側の尿路にどんな異常があるのか、それを調べるために、QさんはCTによる造影検査を受けました。
「まず、目に付くのが左右の尿管の太さ。右の尿管は白い点状になっており、正常である様子がうかがえます。それに比べて、左の尿管は数倍太く、内腔が肥厚しています。尿管の太さと同時に、色の違いも目に付きます。右は真っ白で、左は灰色です。これは、右尿管には造影剤が到達しているから白く写り、左尿管には造影剤が到達していないから白く写らないのです。これらのことから、尿路の異常は尿管内腔の肥厚であることがうかがわれます」(森山さん)
CT造影検査の画像
リンパ節の腫れががんの転移を表す
森山さんによれば、尿管内腔の肥厚が尿管がんである可能性が強いことは経験上、すぐにわかるのだそうですが、そのほかにも、がんである決定的な証拠が写っているといいます。
左尿管の隣をご覧ください。
「リンパ節の1つが周囲のリンパ節より太く、腫れています。これはがんのリンパ節への転移を表しています」(森山さん)
良性腫瘍やそのほかの疾患で尿管内腔が肥厚しているのであれば、転移することはなく、鑑別がつくのです。
幸い、Qさんの尿管がんは、画像検査をしても他の臓器への転移が認められませんでした。がんを手術で取り切ることは十分に可能なのですが、左の腎臓と尿管を全部摘出する手術になるので、合併症のリスクが若い人より高くなるのは否めません。そこで、本人に打診すると、強く手術を希望したそうです。 結果的に手術は成功し、Qさんは今も元気に暮らしているそうです。
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